小説・蓋を開けたら
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「これだけしか入らない器に、これ以上の魔力を注がれたということだ」
「あ、成る程。そういうことだったんですね」
コップや器はそれ以上を注がれれば零れるが、人はそうもいかない。男たちが気絶間際に苦しそうな表情を見せたのはそれが理由だ。それを考えると、コップよりも風船の方が理解しやすいかもしれない。残念なことに、この世界に風船は存在していないが。
気絶するといっても、後遺症は残らない。魔獣などと違って、人の体は他人の魔力を長時間留めておくことは出来ないのだ。ごく稀に全く同じ魔力の質を持つ者がおり、その者同士ならば出来るが、そんな事は滅多にない。
注がれたレッドの魔力は、今頃流れ出て消えているだろう。
「すごいんですね…」
説明され、ようやく理解したイエローは感嘆の声を上げた。
「今のところ、これが出来るのはアタシ達の中でレッドだけね」
「え!?ブルーさんもあんなに凄かったのに!?」
ブルーが少し考えるように間をおいて、グリーンを見た。グリーンも頷いて返す。これは本格的に知識から教えなければならないようだ。何でも屋もどきの手伝いは、それぞれの特訓がある程度終わってから手伝ってもらうことになりそうだ。
それでも、新たにできた仲間に、嬉しそうに口元に笑みを刻んだ。
イエローとレッド達。シロガネの名を頂くその山に、今になって集い始めたその存在。はたしてこれは必然なのか。
考えたところで今の時点で答えなど出はしない。
今はただ、険しいこの地で仲間達との平和な日々を。
第4章END