小説・蓋を開けたら2
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赤毛の少年、シルバーは恐怖に襲われながらも、必死に走っていた。
その目標に近づくたびに恐怖は膨れ上がり、腰が引けそうになる。それを払うために握られた拳からは、爪が喰い込んでいるのか血が流れている。
この感覚をシルバーは知っていた。
過去、1度だけ味わった事がある“これ”。
“これ”は、レッドが“マボク”と呼んでいたモノだ。
あの後、グリーンの協力のもと分かったのは、“マボク”とは“魔”の“僕”、魔法使いの下僕と言うことらしい、と言うことだ。それ以上のことは隠蔽されているのか、どれだけ知らべても知ることが出来なかった。
ブルーの助力を得ればまた違ったのかもしれないが、こんな恐ろしいものに姉を係わらせるのは嫌だった。グリーンもそのことについては何も言わず、情報収集に尽力を尽くしてくれた。
対処法も何も分からない状況で魔僕に挑むのはどう考えても無謀としか思えない。それでも、今戦えるのは自分だけだという思いがある。放っておけば、魔僕はまず間違いなくあの村を襲うだろう。
「!?」
ぞわり、と恐怖が這い上がる。
これは近づいたからではなく、数が増えたからだと本能で悟ったシルバーは舌打ちをした。半分は虚勢で、残りは竦みそうになっている自分自身に対してだ。せめて仲間が、唯一対処法が分かっているレッドが来るまで持ちこたえなければならない。
1度味わい、その姿を見たからこそ、より強く感じる“恐怖”に、立ち向かう覚悟を決めなければならない。
魔僕は、すぐ近くまで迫っていた。