小説・蓋を開けたら2
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ゴールドは森に近づくにつれ襲ってくる“恐怖”に立ち尽くしそうになる自分に逆切れし、それを原動力にひた走っていた。この“恐怖”の元が何なのか、せめて確かめる必要があった。
汗ばむ手でキューを強く握りしめ、天高く突き上げた。そのまま1度だけ電撃砲を発射する。森は危険だと言う合図だ。
この“恐怖”が森から発せられている以上、森にある避難所を使うことは難しい。森に向かおうとしていた人たちを思い出し、行かないように言っておいて正解だった、と胸中で呟いた。
今の合図に気付いた者がいるだろう。ならばもう1つの避難所、海沿いの洞穴に行くはずだ。
合図を送ったのだから直ぐ帰ればいい、という見方もあるが、先にも言った様に、此処まで来たのだからこの“恐怖”の正体を知り、それを伝えたほうが対処のしようがある。
昼とは違い、不気味な雰囲気を醸し出す森に入り、ゴールドはふと気付いた。
“恐怖”に近付くスピードが速くなっている。
ゴールドは走るスピードを上げている訳ではない。つまり、
「(近づいてきてるっつーことかよ!)」
耳を澄ませば聞こえてくる。ガサガサと風により葉と枝が奏でる音とは別の、明らかに何かが近付いて来る音が。
逃げ出しそうになっている自分に気付いて、ゴールドは奥歯を噛みしめ、半ば意地のようにその音へ無理矢理向かって行った。
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