小説・蓋を開けたら2
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“恐怖”のため興奮状態に陥っているゴールドが、捲し立てる様に少年に叫ぶ。
「なんなんだよあれ!!」
なんとか自分の足で走りながら、自分を助けた赤毛の少年に問い詰めるが、返ってきた答えは「詳しくは知らない」と言う、何ともそっけないものだった。
「知らね、ってど、いうこった!!」
「知って、のは“魔僕”、名前、くらいだ!」
2人とも既に息は切れており、限界が近い。怒鳴り合う事で余計に体力を消耗しているが、そうでもしないと“恐怖”に喰われかねない。怒鳴り合うことで気力を生んでいると言ってもいい。
ゴールドの先導で、“アレ”、魔僕とは付かず離れずの距離を保っている。
地の利はゴールドにある。クリスタルを助けたときに言っていたように、この森はゴールドの庭と言っても過言ではないのだ。暗かろうと自分の家で迷うことが無いのと同じように、たとえ夜だとしても、1度自分のいる場所が分かれば迷うことは無い。
「んじゃ、テメ、は?!」
質問の意味が分からず、少年は怪訝そうに眉を顰める。ゴールドはそれに気付かず、正確には気付く余裕がなく、勝手に自己紹介を始めた。
「オレ、は、ゴールド!お前、は?!」
「…銀(ギン)、だ!」
目の前の丁度良い枝を掴み、勢いのまま上に登って行くゴールドに銀が続く。それを見ていた魔僕が木に登ろうとしてくるが、4つ足の獣型である魔僕に登ってこれるはずがない。
ゴールドが息も絶え絶えに、銀へ尋ねる。
「おい、銀、オメ、ホント、倒し方、知らね、のか?」
「オレ、は知ら、ない」
「オレ、“は”?」
このまま逃げ回っていても現状が変わることは無い。なんとか打開策を出さなければ、いずれ魔僕に殺される。ゴールドより魔法を使っていた銀は特にそうだろう。魔力切れで倒れるのも時間の問題だ。
鋭い眼光で、木の周りをうろついている魔僕を見ながら、銀が口を開いた。