小説・蓋を開けたら2
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ガサガサという草をかき分ける音が大きくなり、出てきたのはあの赤毛の少年だった。
「あ!テメェ!」
「お前…!!」
ゴールドが思わず声を上げ、その声で誰だか変わったのか、少年は目を丸くする。瞬間、目をキツク吊り上げ怒鳴るようにゴールドに言った。
「何でここにいる!?早く村に戻れ!!」
「ハァ!?何でテメェんなこと言われなきゃならねぇんだよ!!」
「つべこべ言わずに…っ!」
この数十分のうちに何度感じたか分からないぞくりと背を這う恐怖に、2人は息を詰める。
我に返った少年が、自分が走ってきた方を見て左手を翳した。光と共に現れた分厚い氷の壁。それにぶつかった“何か”を見たゴールドから血の気が引く。
“何か”は怯んだように後ろに下がったが、またぶつかってくる。今度は、“それ”が当たった場所が、溶けるとは違う、まるで“それ”に喰われるように無くなっていった。
「…っくそ!」
悪態を吐き捨て、恐怖で硬直したゴールドを引っ張ってその場を離れるため駆けだす。“アレ”に捕まればどうなるか正確に分かるわけではないが、生き物の本能として感じ取っているのだ。
“アレ”捕まれば、喰われると。
目の前の人物を見捨てるほど少年は非道にはなれないし、何より、少年が今此処にいるのはあの村を救うためなのだ。あの村の住人であるゴールドを見捨てるという選択肢が生まれる訳がない。
ゴールドを逃がしたいが、“アレ”がこちらを追いかけて来ないと村が襲われる。
板ばさみとも言える状況に、少年は唇を噛み締めた。