小説・蓋を開けたら2

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 魔僕から距離を取るため魔法を放ちながら走るゴールドと銀の目に、堂々と聳える大樹が映った。そう、此処はクリスタルと対面したあの場所だ。
 ようやく見えたそれに、ゴールドが歓声を上げる。


「あれだ!」


 大樹を目指す2人に、魔僕が追いかけるスピードを上げ、行かせまいとするように咆哮する。その咆哮に2人の足が竦み、その微かな時間で距離が詰められた。


「にゃろ!」

「おい!?」


 銀の制止も聞かず、ゴールドは再び黄色く発光するキューを構え魔僕に向く。状況を一瞬で判断した銀も左腕を前に付きだした。大樹まで辿りつくのが不可能である以上こうするしかない。
 大口を開け襲い掛かってくる魔僕の頭に、ゴールドが電気の槍と化したキューの切っ先を叩き付ける。それと同時に、地面から突き出した氷が魔僕を突き上げた。付き刺さったキューから電流が流れ、氷の切っ先が貫通しているが、それでも魔僕は暴れている。上げた雄叫びはまるで怨嗟の声だ。


「これでもダメなのかよ!?」


 ゴールドが愕然と叫ぶなか、銀が無理矢理右腕を上げた。それを横目で捉えたゴールドも、それに倣うように両手の平を地面に当てる。
 クリスタルを助けたときと同じように、幾つのも雷球が周りに浮かぶ。雷球を生みだした魔法陣の形がゆっくりと変わると、それに合わせて雷球も細長い槍へと姿を変えた。それらは全て魔僕へと向いている。
 その魔僕の上には、銀が出した幾つもの氷の刃が浮かんでいた。


「行っけぇ!」
「息絶えろ!」


 ゴールドは両手を上に振り上げ、銀は右手を下に振り下げる。同時に放たれたそれは、正確に魔僕を貫いた。下から雷槍、上から氷刃に貫かれた魔僕は、呪詛を叫んでいるかのような悲鳴をあげ、恐怖と不快感を残し姿だけは跡形もなく消滅した。


「倒した、のか?」


 呆然と呟いたゴールドの声が、静寂の中で妙に響いた。



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