小説・蓋を開けたら2

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 以前レッドが軍内で使った魔法より、魔法陣を残さずに操作する魔法のほうが魔力を消費する。治癒魔法や補助魔法は、使用後必ず魔法陣が消えてしまうので相当な魔力が無いと使えず、以前のレッドは安易に使うことは出来なかった。
 だが、ピカに加えチュチュまでもが仲間に加わった今、レッドは魔力の絶対量が増えることに気を使う必要があまりなくなった。そのおかげで思い切り魔法を使えるようになったのだ。

 洞窟に入り魔僕の気配がないことを確かめたレッドは、入り口に杭のようなものを上下に1本ずつ、左右に2本ずつ打った。最後に、入り口から少し入った場所に他のものとは違う、細身で模様の付いた杭を打つ。


「何ですか、それ?」


 使いやすいように薬を並べていたイエローが近付いてきて、不思議そうに覗き込んだ。


「結界の補助魔法具だ」


 ゴールドも使っている補助魔法具というのはその名の通り、魔法を使うときそれを補助する道具だ。主に初心者魔法使いが使っており、魔力を魔法に転換し外に出すのを補助するもので、そのため通常の魔法具と違い魔法使いにしか使うことはできない。
 ゴールドがキューに電気を纏わせたとき魔方陣が出ず黄光のみなのは、キュー自体が魔方陣の役割をしているからだ。
 魔方陣は魔力を魔法に転換させるための出口のようなもので、魔方陣をうまく展開出来なければ魔法を繰り出すことはできない。本来、ゴールドが持つキューの役割はそれの補助なのだが、ゴールドは明らかに違う目的で使っている。

 レッドがイエローに使い方を教えているときだ。
 森の方向から、魔僕の断末魔が響いた。


「こ、これ…!」

「誰かが魔僕を倒したんだ」


 方向としては森の方からだったが、ここから森の方角というと村挟む。あの断末魔が村からなのか森からなのかは定かではない。
 これからレッドとイエローは別行動になる。レッドは村へ行って救助の手伝い、イエローはここで怪我人の手当てだ。何事もなければ負傷者はほとんど出ないはずだったのだが、魔僕が出た以上、死傷者を覚悟した方がいいだろう。


「イエロー、避難してきた人達を頼むな」

「はい!」

「ピカとチュチュも。頼んだぞ!」

「ピカ!」

「チュゥ!」


 はっきりとうなずいた1人と2匹に此処のことを任せ、仲間の安否を心配しながらレッドは村に駆けていった。



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