小説・蓋を開けたら2

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 ゴールドの合図を見ても、村人は動くに動けないでいた。というのも、魔僕が村に入り込んできたからだ。
 闊歩する“恐怖”に家の中で身を縮こませるしかない。
 そんな中を、クリスタルは慎重に歩いていた。“恐怖”を精神力でねじ伏せ、ゴーストタウン並みに静かになった村を歩いていく。

 クリスタルがこのような行動を取っているのは、偏に、1人で森に向かっていったゴールドを心配してのことだった。先ほど森から聞こえてきた、叫び声ともつかぬ声についても気がかりだし、この“恐怖”が、ゴールドの向かった方向から来たのだとしたら、ゴールドの生存率は限りなく低い。
 それを考えたら居ても立っても居られなくなり、ゴールドの母の反対を押し切って単独で外に出来てきたのだ。


「(ゴールド…)」


 心配にうつむきそうになる顔を無理やり上げて、周囲に気を配りながら歩いていく。一瞬の油断が命取りになる。
 再び気を引き締めて歩いていると、何かが崩れる音に混じり、悲鳴が聞こえてきた。
 クリスタルは1度足を止め、音のした方へと走り出した。
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