小説・蓋を開けたら2
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その音に走り出したのはクリスタルだけではなかった。
「確かこっちだったわよね?!」
「ああ!」
意識を磨ぎ澄ませ、周囲の気配に気を配りながらグリーンとブルーは走る。
シロガネ山での特訓のおかげで、2人は常人以上の体力を誇り、足の速さもそれに見合うものだ。レッドほどでないにしろ、確実に一般的な動きではない。
そんな2人の目に、崩れた家が映る。その隙間に人の影を見つけ、ブルーが声を上げた。
「人が!」
そこには子供を庇うように下敷きになった親子がいた。
グリーンが右手を翳し、その下に魔法陣を展開させた。出現した植物の蔦が瓦礫を押し上げその隙にブルーが3人に駆け寄る。蔦が安定したのを確認し、魔法陣を消してからグリーンがその後に続いた。
「大丈夫ですか?」
「あなた達は…?」
「依頼により、この村の避難を手伝いに来た」
どうやら子供は気を失っているだけで無事の様だ。母親は軽症だが、危険なのは父親だろう。
驚きの色を見せた母親が、その後必死の形相で叫ぶように2人に言った。
「夫が私と子供を庇って!ああ、“アレ”が…!!」
「落ち着いてください!」
「…いや、その時間は無いようだ」
「え?」
鞘から刀を抜き、その親子とブルーを庇うように構えたグリーンが、静かに言った。ブルーが小さく声を漏らして振り返り、母親が子供を抱きしめ短い悲鳴を上げる。
そこにいたのは、姿かたちは動物のそれだが、生き物とは到底思えない、まさに化け物と形容すべき存在、“恐怖”の正体だった。