小説・蓋を開けたら2
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「お前は何故此処に?」
「わたしは、」
言いかけて、自分が外に出てきた本来理由が頭の中で大きく主張した。
そう、この家の人が無事だったのだから、自分は森へ行かなければいけなかったのだ。
「どうし…」
「すみません、この人たちをお願いします!わたしは森に行かないと…!」
「ちょっと待って、森?!」
いつの間にか傍に来ていた少女が、駆けだそうとしたクリスタルの腕を掴んだ。少女はどこか焦っていて、思いのほか強く掴まれている腕に微かな痛みを感じる。
「森がどうかしたの?」
どこか焦るように揺れている少女の瞳に、クリスタルは戸惑いながら口を開いた。
「ゴールド、えっと、わたしと同い年の魔法使いの男の子なんですけど、様子を見てくると言って1人で森に入っていったんです。そのずいぶん後に森から凄い声が聞こえて」
「そう…」
少女はほっとしたように息を吐いて、クリスタルの腕を放した。戸惑うばかりのクリスタルに、緑が説明する。
「森にはオレ達の仲間の1人がいる。その凄い声というのは“恐怖”の原因が倒された時の声だろう」
「本当ですか!?」
それが本当ならば、ゴールドは生きている。
クリスタルは安心のあまり、目じりに涙を溜めしゃがみこんだ。
「良かった…」
ゴールドは生きている。それに、仲間がいると言っていた。つまりは1人じゃない。少女がほっとしていたのは、その仲間のことを思ってだろう。
ならばと、クリスタルは次にやらなければならないことを考えた。この状況だ。気を抜くのはまだ早い。
クリスタルは立ち上がった。