小説・蓋を開けたら2

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「ぐぁああ!!」


 直後聞こえてきた悲鳴に顔を上げ、クリスタルは言葉を失った。
 クリスタル達より魔僕に遠い場所に居たはずのゴールドは、左腕を噛みつかれ苦悶の表情を浮かべている。そのまま雷槍と化したキューを魔僕に突き立てた。


「そのまま押さえてろ!!」


 突如聞こえたその声に、ゴールドは思わずそちらを振り返る。
 赤々と燃え盛る炎が横切って。
 防御の魔法の上から炎を纏った足が魔僕に叩きこまれた。

 これでもかと助走を付けられたその足技は、面白いくらいに魔僕を吹っ飛ばす。吹っ飛ばされた魔僕は、悲鳴を上げる暇さえ無く瓦礫の中に突っ込んでいった。
 不格好に崩れ、その場に存在していた瓦礫が更に飛び散る。

 魔僕を警戒しながらシルバーを己のすぐ後ろに降ろしたレッドは、直ぐにそこへと向かって行く。この闇の中、レッドが纏っている炎の“赤”がやけに目立つ。シルバーはその“赤”から目を逸らし、後ろに目をやった。そこには左腕を抑えて荒い呼吸をくり返し、脂汗を滲ませているゴールドがいる。その両脇は、泣きそうに目を潤ませた小さな女の子と、心配そうに、それでも真剣に傷を診る少女の2人に埋められている。
 ゴールドのどす黒く爛れたような左腕を見て眉を寄せる。見たことの無い症状だ。


「その傷はどうした」

「…んなことより、加勢しなくていいのかよ」

「問題は無い」


 逆に足手まといになる、そう言って、シルバーがあの目立つ“赤”がいるだろうその場所を見れば、釣られて全員が視線を向ける。
 両足の2つしか無かった炎の赤がもう2つ増えており、位置から手から腕にかけてだろうと推測する。左腕の炎が真下に叩きつけられ、腕を纏っていた炎が糸を解くように離れていき真下にいるらしい魔僕をギリギリと締め上げる。怨嗟の声が木霊する中、炎が広がり魔僕の形が浮かび上がった。
 レッドが右腕を引き、勢いよく前に突く。その直後炎は周りに飛び散り、“恐怖”も消えうせる。


「すげぇ」


 痛みも忘れたようにゴールドが呆然と呟いて、以前もレッドが魔僕を倒す様子を見たことがあるシルバーは、未だに近付くことのできない力量に歯噛みした。
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