小説・蓋を開けたら2
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左腕に包帯を巻かれ、他の傷の治療も受けたゴールドは、突っ伏し、まさに、“返事が無い ただの屍のようだ”という状態になっていた。ピクリとも動かない。治療の様子としては、途中からクリスタルと青も、ゴールドを抑えにかかったとだけ説明しておこう。因みに、銀は黄の治療を受けていた。
「あ、あの、ゴールド大丈夫なんですか?」
「うん。ただ、いろいろ疲れだけだろうから」
確かに途中暴れ出しそうになりながらも、痛みを堪えていたのだから、疲れたと言うのもうなずける。
さらりと赤は頷くが、やはり心配なのだろう、クリスタルが屈み見る。すると、ゴールドが何かを言っているのが分かった。聞きとるために、耳を近づける。
「…水?」
確かに「水」とうわ言のように、ひたすら呟いている。
「ちょっと待って。えーと、水は…」
「はい、どうぞ!」
「え?」
ずいっ、と水の入ったコップがクリスタルの目の前に差し出された。反射的に受け取って、目を白黒させる。
「あれ?違いました?」
「い、いえ!ありがとうございます!」
反応を見せないクリスタルに、麦わら帽子を被ったその人が首を傾げた。慌てて否定し、お礼を言うと「よかった」と笑顔が返ってくる。それに会釈してゴールドに水を届けに向かった。
「水持って来てくれたわよ」
声をかけると、生ける屍のごとくゆっくりとした動きで起き上がり、クリスタルから水を受け取った。かと思うと、凄まじいスピードで水を喉に流し込み、コップに入っていた水は、あっという間に無くなってしまった。
「あ〜、生き返った」
「そ、そう。よかったわね」
その言葉に、引き攣った笑顔でただ1言だけ返す。冗談にならない。なんていったって、本当に“生き返った”ような動きだったのだから。