小説・蓋を開けたら2
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新たに出された情報。それを聞いたゴールドは、まるで恐喝でもしているかのような表情で、ウツギに詰め寄った。
「どーゆう事だか、ちゃんと教えてくれるんスよねぇ?」
少しずつ後ろにさがっていくウツギは情けないとも言えるが、ゴールドの表情が表情だ。見た目だけの不良なら尻尾を巻いて逃げだすだろうほどの凶悪顔に、非戦闘要員に怯むなと言う方が無理である。
今回ばかりは、流石のクリスタルも助けようとはしない。自分の預かり知らぬところで、自分のことが勝手に決まっていたのだ。怒るのも当然と言える。
「それくらいにしておけ、話しが進まない」
「そうそう!慌てなくても、ちゃんと説明するわよ!」
いつ終わるとも分からないそれに終止符を打つべく、片方はため息交じりに、もう片方は苦笑交じりに仲裁する。
「まず先ほどの話しだが、軍はお前を生け捕りにと命令を出していたはずだ」
つまり、クリスタルが原因ならば、皆殺しにするような真似をしない、ということだ。軍は、この村にクリスタルがいる事を知らないのだろう。
クリスタルの居場所を軍が知らなかったは、クリスタルのことを追っていた奴らが軍どころか誰にも報告していなかったからだ。本当の理由は本人達を捕まえ問い詰めなければ知ることは出来ないが、予想は出来る。どこにいるのか情報を提供するより、本人を連れていく方が金になる。
まあ他に、厄介なことをしでかしてくれたが、それはまた後ほど。
「わたしが原因でないのなら、何で村は襲われたんですか?」
「…今のところ危険分子の殲滅っていうのが、1番高い可能性だよ」
訴えるような問いかけに答えたのは、グリーンではなくレッドだった。
俯いているため顔は分からないが、普段より低い、怒気を孕んだその声とは裏腹な、静かな雰囲気に誰しもが身を震わせた。
「危険、分子、って、オレらが、っスか?」
震えながらも必死に紡がれた言葉に、レッドは顔を上げた。その瞬間、あの雰囲気は既に霧散しており、余韻すら残っていない。そのことに対して、知らぬうちに安堵の息を吐く。
「この村は、軍に対してあんまり良い思いを持ってないだろ?だから、いつ牙をむくか分からないって言うのが理由だろうな」
「なんスかそれ!!」
激情のままに、ゴールドが叫ぶ。
「そんな理由で…!」
クリスタルがキツク両手を握りしめた。