小説・蓋を開けたら2

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 自分達は、レッドについて知っていることが圧倒的に少ない。1番レッドと長い付き合いであるグリーンも知っている事はほとんどないらしい。
 あの強さの秘密も、国に対して恨みがある訳でもないらしいのに反政府側を手伝う理由も、反政府側を手伝っているのに穏健派と過激派のどちらかに着く事なく中立を保つ理由も、偽名を使う理由も、それから、


「(シロガネ山に選ばれたって言ってたけど、何でシロガネ山に選ばれたのが分かったのかしら?)」


 分からないことが多すぎる。
 信用されていないとは思わない。信頼だってされていると胸を張って言える。


「やっぱり問いただすのが1番早いわよね…」

「え?」

「レッドの事よ。帰ってきたら、いろいろ問い詰めてやりましょう」


 そういえば魔僕のことも教えてもらってないわね、なんて口にして。そんな様子のブルーに、クリスタルは笑みを浮かべて同意した。


「そうですね」


 顔を見合わせて少女たちが笑い合う。そんな和やかな空気の中、鏡に紋章が浮かぶ。グリーンの紋章だ。
 小首を傾げながら、鏡に手を翳す。
 すると映ったのはグリーンではなく、グリーンと共に買い出しに出かけていた少女、イエローだった。


『あっ!映りました!よかったー』

「イエロー?どうしたのよ、何かあったの?」


 イエローはまだ自分の紋章を持っていないので、グリーンのものを使わせてもらったのだろう。紋章の持ち主が通信魔法具に繋げば、持ち主以外でも使う事は出来る。


『そうでした!レッドさんいませんか?』


 イエローの問いに、ブルーは首を振る。


「レッドはエリカに呼ばれて、今はいないわ」

『そうですか…。じゃあ、えーと、クリスタルさんに確認したいんでけど、エメラルドさんって知ってますか?金色の髪の男の子なんですけど…』

「エメラルド…エメラルド君のことですか?はい、知ってます。…あの子がどうかしたんですか?」


 エメラルドは、クリスタルが各地を周っているときにお世話になった孤児院にいた子だ。クリスタルに人一倍懐いており、クリスタル自身も弟のように思っていた。
 そんな少年の名前を思わぬところで聞き不安に眉を寄せる。


『実は…』


 イエローもどことなく困惑した様子で事のあらましを話し始めた。
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