小説・蓋を開けたら2
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「だぁあああ!!畜生!!」
雪の上に倒された少年、ゴールドが声を上げる。
前にいた赤髪の少年、シルバーは木で作られた対人訓練用のナイフを懐にしまった。
「動きに無駄が多いんだお前は」
そう言われれば、ゴールドは唸るしかない。
望まずとも軍で訓練を受けていたシルバーは、確かにゴールドより強いし、身のこなしにも無駄がない。そのことはゴールドだって知っているので、村で暮らしていた自分より戦い馴れているのは当然だと分かっている。だが納得はいかない。
ゴールドは負けず嫌いだ。訓練を受けていようがいなかろうが関係ない。同い年で背丈や体つきも似たようなシルバーに何度も負けるのは悔しい以外の何物でもないのだ。
「あっ!ブルーせんぱーい!」
「!?」
ゴールドが行き成り立ち上がり、大きく手を振った。だが、勢いよくシルバーが振り返った先には誰も居ない。
まさか、と思う暇も無く飛んできたのは丸められた雪。
「隙あり!!」
「っおまえ!」
「へっへーん」
その後は言うまでも無いだろう。手合わせというより取っ組み合いの喧嘩が勃発した。
そんな2人を見守るのは、呆れ顔の少女2人、ブルーとクリスタルだ。
暖かい家の中から、窓越しに取っ組み合いを見守るブルーは「仕方ないな」といった様子で、温かみのある表情はどことなく嬉しそうだ。
「本当に、あの2人は飽きませんよね…」
「本当ね」
ゴールドとクリスタルがシロガネ山に来てから、ここはより一層賑やかになった。雪は音を吸収するというが、余りの騒がしさに雪でさえも吸収し損ねてしまっている。
グリーンとイエローは何でも屋もどきの仕事(今回は確か畑仕事だったはずだ)の後、買い物をして帰ってくる予定になっている。
人数が増えたため、何でも屋の見返りやシロガネ山で取ってくるだけでは食糧が足りなくなってしまい、ローテーションで買い出しや狩りを決めている。昼前には帰ってくるだろう。
グリーンが帰ってきたら、この騒がしさに眉を顰めそうだ。考えて思わず笑みを浮かべた。
「あの、ブルーさん」
眉を下げ、困惑とも心配ともとれる表情のクリスタルに、ブルーは首を傾げた。
「レッドさん、大丈夫でしょうか?」
その言葉にブルーの眉が無意識に下がった。
レッドは1時間ほど前にエリカに呼び出されタマムシに行っている。レッドの様子も通信を通してのエリカの様子も普通でなく、慌ただしかった。何か良くないことがあったのだろうと、想像に難くない。