オリジナル

□嵐は唐突に
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「うわああああ!!!」


──カチャン


間の抜けるような音と少年の叫び声が甲板に響いた。
辺りは一瞬静まり返り、少年の「…ぇ」という呟きにより、それはすぐに笑いの嵐に代わった。中には笑い転げる者も甲板の手すりを叩いて笑う者もいた。何がなんだかわからない…とりあえずクラウスの言っていたことは本当ということか。


「小僧、俺の銃返してもらうぞ」
「……くっ!!」

クラウスはデカい歩幅で少年に歩み寄ると、その手から強引に銃を取った。そして悔しそうな少年の頭を軽く叩き注意する。

「子供がこんな危ねぇもん持っちゃいけねぇよ。」
「俺は子供じゃない!!海賊だ!!」
「赤旗も上げずに攻めてくるなんてルール違反するのは海賊じゃねぇ」
「……なんだよそれ、赤旗って。」

やはり少年は知らなかったらしい…。庶民でも知っているような知識を知らないなんて、よっぽど平和なとこで育ったのか、それか内陸育ちか。海賊に憧れて海に出ただけの素人といった所か。

「はぁ〜、家で親父さんとお袋さんが待ってるぞ、港まで送ってやるから早く帰ってやれ」

そうだぞー、と周りの海賊達も同意見の様だ。ここの海賊達はみんな過保護なんだろうか…。


「親は…いない」




──沈黙。
少年が放った予想外の一言に空気が凍る。途端、「……うぅ」だの「…ぐすっ…ちげぇよバカこれは心の汗だ」とかなんとか言い出した海賊達。今時親無しの子供など珍しくはないと言うのに、本当に海賊かコイツら。

「…身寄りはねぇのか小僧」
「…そんなものない」
「そうか」

そんな中、何か考えていた様だったクラウスは少年にそう問い掛け、応えを聞くとおもむろに後ろを振り返りこう言った。

「いいか野郎共!!コイツはたった今から俺の息子になった。」
「お頭!!?ちょっと待って下さいよ!!またそうやって要らないもん船に積んじゃって…」
「ハリー、コイツは俺が面倒見るって言ってんだ。心配すんな」
「………。(余計心配だ)」


心配性のハリーはともかく、他の海賊達は賛成のようでもう歓迎会の話をしている。基本的には皆気の良い奴らなんだろう…まぁ半数は酒が飲みたいだけだろうが。話題の中心人物である当本人はいったい何が起こったのかと目を白黒させている。当然だろう、いきなり知らない(しかもさっきまで敵だった)男に息子にするぞ宣言をされてしまったのだから。


「とりあえず…飯だな!!」
「黙れよクラウス禿げろ」



 後にこの少年はレオンハルトと名乗った。嵐よりも急に訪れたこの子供の扱いをどうしようかと頭が痛くなったアレックスだった。




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