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□一話
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戦場のヴァルキュリア3
※セルジュ断章以前



 ガリア公国ガリア正規軍所属。時は帝国軍との戦の真っ只中。
愛用のライフル銃の引き金を引く度バタリバタリと遠くで倒れる獲物達。それが、戦場で生きる僕の仕事だった───





 元々根暗で体も弱かった僕は、部隊長殿に何度願っても前衛にはなれなかった。


───悔しかった。
認められない悔しさと、己自身への絶望感でもう死のうかとも思った。
せめて戦場で死ねたなら…僕も一端の軍人として認められるんじゃないか。
でもそれにはまず戦場に行くだけの力があって、足手まといではないという証明が必要だった。
体力のない僕でもできること…それがスナイパーだった。


 その日からだ。僕は周りの同僚達が気味悪がるくらいに的を撃ち続けた。元から射撃は得意だったので、集中してやればどんどん上手くなった。
そしてさほど経たない内に戦場に赴くことを許された僕は歓喜して獲物を狩りまくった。戦場の怒号も銃声も、ライフルを構えた瞬間かき消える。あとはどんな的でも真ん中を狙って引き金を引くだけだ。外すなんてありえない。やるのは簡単だった。

こんなひ弱な僕でも、戦場という場所は人を殺せる限りその存在を必要としてくれる。……そう思った。だから僕はひたすら狩った。
戦場が自分の存在を認めてくれる唯一の居場所となった。


そうして僕の名前が大部隊長殿に知られるくらいになった頃。
ある事件が起きた。


 ただの風邪かと思っていた咳きは不治の病だった。医者にはもう手遅れだと見放され、唯一の居所である軍からも除隊された。このまま行けば病院のベッドでただ静かに死を待つのみ。

…でもそんなのは嫌だ!!僕はまだ狩れる。戦場に必要とされる存在だ!!
そう軍部に抗議してみても、いずれ死ぬ病人は足手まといだと追い返された。


──射撃の腕なら誰にも負けないのに。
愛する戦場から見放されたような気がして眠れぬ夜が続き、病状は悪化した。

僕は戦場に取り憑かれた軍人だ。今更死ぬ程穏やかな病院のベッドで死にたくなんかない、絶対に。

 軍管轄の病院への入院を断った僕は、再度入隊の申請を出しに行った。受付の隊員にはもう顔を覚えられていて、またコイツかよ、という顔をされた。


だがその日はいつもと違い、新しく入隊を希望する新兵達を品定めに来ていた大部隊の隊長殿がいた。普通だったら有り得ない光景に僕は心底驚いた。
けれどそれより驚いたのは隊長殿が僕の名前を知っていたことだった。

いつもだったら提出してもすぐ破棄される僕の入隊申請書が、ピタッと隊長殿の目に止まった。


そして事の経緯を聞いた隊長殿はある懲罰部隊の存在を教えてくれた。


──ネームレス

聞いたことはあった。
軍の記録から抹消された名前を持たない部隊。問題を起こした奴らが送られる墓場。


大隊長殿曰わく、そこなら不治の病を患う病人であろうが入隊できる、と。死んでもいいやつらの集まりだからだそうだ。

しかもいつでも欠員だらけで、命令違反及び脱退は銃殺刑。つまり戦場からは逃げ出せない、僕にとっては最高の部隊だった。


僕は大隊長殿にお願いして自ら422部隊、通称ネームレスに志願した。
これからまたあの愛しい戦場に帰れるのだと思うと、身体を苛む病も気にならなかった。


僕はやっと死に場所を見つけた───そう思った。




──────────────
セルジュの心情複雑やー^q^
続いたりする
.


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