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□白いレール
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「さっみぃ…」

寒さはまだまだ真冬並みとはいかないものの、馴染み切らない体は燐の体感温度を下げた。今いる駅は寂れた駅で自分以外フォームに人はいない。目の前のレールには白く眩しい雪が降り積もっていてどこまで真っ白だ。まだ来ない待ち人と列車はどちらが早く着くのだろうか。

「っはぁ…お待たせ、兄さん」

白い息を切らせながら走って来た弟は、自らの体温で若干曇った眼鏡を拭きながら隣へと並び立った。兄である筈の自分の身長を抜いたのはいったいいつだったか。気付けば見上げているのは自分の方だった。そもそも双子なのだから兄の方が必ずしも高いという訳でもない、…だが悔しいものは悔しい。何故こんなに身長差が開いたのか…。
そんな思いが顔に出ていたのだろうか、もしかしたら口に出していたのかも知れない。「兄さんもその内伸びるよ」と励まされてしまった…余計にイライラしたのは言うまでもない。

 そんな弟に文句を言おうとした瞬間、電車のガタンゴトンという音と駅員の到着アナウンスが響いた。

「帰ろう兄さん」
「…ああ」

こちらを見る弟は目線が同じだった頃と何も変わらない笑顔でそう言った。そんな顔を見たら文句は自然と消えて無くなってしまった。今は背だけではなく祓魔師としても抜かれてしまっているが。

「いつか、絶対抜いてやるからな!!」
「…身長を?」
「全部!!」


とりあえず宣戦布告だけはしておこうと思った──




白いレール





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