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□自覚(R)
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微睡む意識に引っかかったその音は俺の瞼を開けさせた。

カチャカチャゴトン、と重厚で金属質な音が顔を向けた先雪男の机の方からした。
案の定そこには真剣な顔で銃の手入れをする弟の姿。
俺は寝ぼける体を無理矢理動かし、あくびをしながら雪男の側に寄った。

「ふぁ〜…ん、ねむっ…雪男〜まだ寝ないのかー?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「ガチャガチャ音がしたから。銃の手入れか?」

時計の針はもう深夜を回っている。
さすがにもう寝た方がいい時間だ。

「寝ねーの?」
「そうだね、けどちゃんと手入れしとかないと。」
「ふ〜ん」

正直言って銃のことなんかわかるわけがないし、自らの武器の手入れもこれといってしたことはない。
本当はした方が良いのかもしれないけど、あの刀は普通の刀じゃないのは抜けばわかることだ。
手入れ…いらないよなぁあの刀。

そこでやっと手入れが終わったのか、銃をホルスターにしまい道具を片付ける雪男。
それを軽く手伝いながらふと気付くと雪男とピッタリくっつくくらいの距離に来ていた。

触れ合う肩に相手の息遣いまで聞こえそうな近さで、それが妙に気になる。
けど何故か離れ難くて、手伝えるとこは終わったけどそのままでいた。

雪男の片付けが終わるまで…そう思っていたそれは、何故か片付けが終わってもそのままだった。

「…寝ねーのか?」
「兄さんこそ、もうやることないんだから寝ればいいじゃない」

俺を起こしたのは誰だよ。


紛れもなくお前のせいで起きたんだよ。

「へいへい、言われなくても寝るし」
「明日も早いんだからね」
「その言葉そっくりそのままお前に返す。じゃ、おやすみ」
「…おやすみ」

なんだよ、全く。相変わらずオカン属性発揮しまくりの弟だ。

俺は眠気半分怒り半分で布団に入った。
このまま寝て忘れてしまおう。
そう思って深く布団を被った。





……ん?
なんか…下半身がやたら重い。

クロ…にしては重さの面積が違い過ぎるし、それに結構重い。


まさか…下半身限定の金縛りか?!

……こええええええ!!!!


ど、どうしたらいんだよ!怖くて確認もできないし。

もし確認して腰に座敷童とか乗ってたら俺どうしたらいいかわかんねぇよ!!



こ、こういう時は…。

「なむあみだぶつナムアミダブツぬぁむあみだぶつぶつぶつ(小声)」

奥の手、詠唱!
なんか勝呂達が唱えてんのとは違う感じもするけど…まぁ雰囲気は合ってんだろ。

すると、下半身の重みがのそりと身じろぎした。



効いてるッ!!!!


効果テキメンだ!
そう思った矢先、その重みの原因であろうものから音がした。

否、声と言うべきであろう。

それは座敷童の子供のような声ではなくて、低いと高いの中間みたいな、独特の甘さを持って俺を"兄さん"と呼ぶ声だ。

「って…雪男?!お前そこで何してんだ?寝たんじゃないのかよ」
「そう、思ったんだけどね。兄さん自覚ないみたいだから。もう既成事実作った方が手っ取り早いかなって思って」
「は…?俺が、なんだって?キセイジジツ?」

そう言って灯りも乏しいこの部屋でもわかる程にっこり笑う弟と意味もわからず戸惑う俺。

せめて日本語で話してくれよ。

「大丈夫、あとでわかるから」

何故だかその笑みに身の危険を感じる。




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