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□マン・ド・レイク
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※後半ぬるいエロ注意
「――ですからマンドレイクを使う場合は、この毒性に注意して取り扱わなければいけません」
カツカツと黒板を白いチョークが走る音がして、居眠りで寝呆けた燐の頭を少し覚醒させる。
耳に聴き馴染んだ雪男の声に、また眠気が湧き上がって来るのをあくびをしてぐっと堪えた。
昨晩、何を思ったか雪男が急に告白なんかしてきやがった。
本当はその前に色々あった訳だが燐的には忘れておきたいことなので敢えて割愛する。
結果はお互い好きってことで落ち着いた。
けれど、燐の方は雰囲気に流されたところがあったのも否めない。
何しろ唐突だ。
心も体も全く準備出来ていなかった。
そんなこんなで燐は今朝から大変モヤモヤしていた。
だというのに雪男の方はいつもとあまり変わりないように見える。それがいっそうモヤモヤへ拍車を掛けた。
燐は机に片肘を付いてその手に顎を乗せた。
「主な毒の症状としては幻覚、幻聴ですが死に至る場合もあるので取り扱いには十分気を付けてください。」
その後も授業は淡々と進んだ。
「おい奥村、もう授業終わっとるぞ。はよ起き」
頭に軽い衝撃が走る。
同時に勝呂の声が聞こえた。
どうやら頭をはたかれたらしい。
「ふぁ…ん、あれ?俺いつの間に…あ、勝呂おはよ」
「おはようって、はぁ…呑気やなぁ。次外実習だから移動やぞ。はよ着替えろや」
「へいへい」
トボけた様な燐の返事に気が抜けたのか、それ以上の追及はしてこなかった。
勝呂は良い奴だ。こうやって居眠りしている俺にも声を掛けてくれる。
面倒見が良いというか、兄貴肌と言うか、頼られるのも頷ける。
けど、いつもは隣の席に座っているしえみが起こしてくれるはず…。
今日はなんで起こしてくれなかったんだ?
そう疑問に思いながらも、燐は着替えて勝呂と実習の場所へ向かった。
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実習地に指定された場所は、さほど校舎から遠くない土の耕された一画。燐達はそこに集まっていた。
この授業の担当教師は雪男で、なにやらスコップを持っている。
「皆さん、先程授業で習ったマンドレイクは覚えていますね。では奥村くん、答えてください」
えぇ?!いきなり俺指名かよ。
寝てたし全然覚えてねぇよ。
マンは男だろ?どれ…どれいく…ドレイクってなんだ!!
あ、でも雪男が幻覚とか危ないとか言ってた気がするな。
「え〜っと…マン・ド・レイクだろ?覚えてるって〜。危険な男、だよな!!」
「はい、不正解。授業中はちゃんと起きててくださいね」
「なっ…」
んぐぐ…なんだあの呆れたよ兄さん、みたいな目は。
どうせ寝てたのわかってて質問してきたくせに。性格悪りぃな。
「では勝呂くん代わりに答えてあげてください」
「はい」
一瞬こっちに視線を寄越したのは気のせいじゃないだろう。勝呂の奴自分ができるからって、ちくしょう
「マンドレイクは根っこに幻覚と幻聴をもたらす強い神経毒を持っとって、取り扱いには十分に注意せなあかん植物です」
「その通りです。またこのマンドレイクに悪魔が取り付いたものをアラウネやマンドラゴラと言ったりします。土から引き抜くと死の絶叫をするので気を付けて下さい」
教えられた範囲で完璧に答えた勝呂。
言い終わった後にこちらにドヤ顔も忘れない。なんなんだよ勝呂の奴。
雪男の補足も入り、塾生達はさっそくマンドラ掘りをすることになった。
今回掘るのは割と大きいサイズなのでスコップを使うらしい。
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