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□徹夜明けテンションフィーバー
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*大伝13までの知識で書いてます
*勢いでうおおおっと書いたのですいません、ほんとすいません駄作
*タイトル…ほぼ関係ない…(ぇ
*らいしお、しおらい どっちかは特に決めてないです
*時系列的には雨の日前の一年間あたり想定 特に話しに関わる訳ではないです




 カリカリとペンが紙の上をひたすら滑る音が聞こえる。
愛用の枕を抱きしめその感触を味わったのはいったい何時間前のことだろうか。
あー…2日前?いやいやそれとも4日前?
既に単位が日数な時点でもうおかしいと誰か突っ込んで欲しいところだ。
あまりの眠気に普段からやる気の無さそうな瞳がさらにタレ目気味になる。
最近寝ても居ないのに寝癖だらけの黒髪、やる気なにそれ美味しいの?ってくらいにだらけたオーラを纏った長身痩躯の男。
その目には呪われた印であるとされる複写眼がうっすらと赤みを帯びている。
もっとも、寝不足のせいで目は全体的に充血しており赤いが。

「はぁ……」
「……」

相変わらずペンの走る音が響く室内に、男――ライナ・リュートの大きなため息がこれ見よがしに零れる。
しかしそのカリカリとした音は規則的に聞こえ続けるし、紙を捲る音が追加されただけだったりするのだが。

「あ〜あ、もう限界。いい加減もう睡眠取らないとさすがの俺でも死んじゃうと思うんだよね」
「……」
「ほら、一日300時間は寝ないといけないからさ俺。だからもう帰っていい?」
「………ライナ、その話は10分前にも聞いた」

今までライナの訴えを無視し続けていた仕事馬鹿もといシオン・アスタールは手元の書類が片付いたのかやっとこっちの話を聞く気になったようだ。

――シオン・アスタール。
このローランド帝国に革命を起こし若くしてその王の座を手にした男。銀色の長髪を後ろで結び、その意思の強そうな瞳は金色に輝き国民を導く…と慣れない説明をするものではないか。
つまり銀髪金眼で仕事中毒な王様。
いつも無駄に自信満々でライナに仕事を押し付けては楽しそうに笑ういじめっ子で、気付いたら親友だった。
まぁ色々あったからそうなった訳だけど、そこは面倒だから割愛。

「休み貰えるまで何度でも繰り返し言ってやるからな。あーあ、今日で徹夜何日目かな〜極悪非道なシオン・アホターレは労働基準法すら守らないブラックの手先みたいなやつだって国民に言いふらしてやろうかな〜」
「あはは、ライナ、この国では俺が法律だよ?そっかそっか、そんなに仕事したいならこの書類の山、今日中によろし「できるかぁああああああああッ!!」

天井に届かんばかりの書類の山を指差しそう言ったシオンについにぶち切れたライナはものすごいスピードでその山に手刀を繰り出した。
バサバサっと床に散らばった書類。もちろん拾う気は0だ。
いい加減眠いのに寝かせてくれない目の前の鬼畜王へのささやかな反抗だったりする。

「あー…せっかくライナの為に積み上げた書類が崩れちゃったじゃないか。あとで拾っておけよ」

シオンは困った様な声音を出しながらその表情は笑っている、否、いじめっ子的なにやにやした笑いだ。
その表情を見た途端どっと疲れが増したのがわかった。

「俺はもう寝る。800時間くらいは寝てやる予定だからお前も仕事ばっかり愛してないでベッドと仲良くしろよ」
「ベッドでライナと仲良くするコースは無いの?」
にやっと含み笑いでライナを見上げるシオン。
「ねぇよっ!!なんだそのコースってのは!この部屋いつから風俗店になったわけ?!」
「へぇ…ライナってば…風俗のコース知ってるんだ。もしかして行ったことあるのか?俺らまだ未成年だけど?」

シオンの顔が面白いことを聞いた、と言った顔になる。ライナは慌てた。

「へ?!…あ、いや……行ったことある訳ないだろ。とりあえず俺はもう帰るから」

妙に間の空いたライナの返答にシオンは目を細めた。
しかしそれも一瞬のことで、すぐにいつものどこが大仰な態度でため息をついた。

「仕方ないなぁもう。そろそろ効率も落ちて来る頃だしね。いいよ、休憩な。じゃ、また四時間後に」
「うん、一週間後な」
「ああ、二時間後迎えを寄越すね」

さっきよりも休憩時間短くなってるじゃねぇかよ!という突っ込みをする気力も無いので無言でそのまま背を向け手をヒラヒラと振りながら、ライナは扉を閉めた。

「ライナが風俗…ねぇ」

その不似合いな二つの響きにシオンは思案気に眉を寄せる。
そして忌破り追撃隊のルーク・スタッカートを呼んだのだった。







 ライナは久しぶりにぐっすり快眠できたので、仕事しないと死んじゃう病の王様のために今日くらいはいいかと早めに執務室を訪れた。

「おはよー」

ノックもせずに扉を開けるとそこにシオンの姿は無かった。
いや、正確に言えばいつも座っている椅子にその姿は無く、何やら床に散らばる白い用紙のなかに埋もれる銀色の何かが見えた気がしたが見えなかったことにしておきたい気もするけど。
とりあえずライナはそのシオンらしき人物を起こすことにした。

「おいシオン、起きろ。倒れる前に寝ろっていつも言ってるだろ」
「…う……んー…ラ、イナ?」

書類の掛け布団を手で払い除けてやり、シオンの肩を揺する。
すると返事は返ってきたがまだ寝ぼけ眼だ。

「お前床で寝るなよな。あの王様専用最高級ベッドはただのお飾りじゃないんだぞ?」
「…あー…うん、あはは、ごめん」

何が楽しいのかわからないが始終ニコニコしているシオンに薄ら寒いものを覚える。
その目の下にはどす黒いクマができていた。
こいつずっと徹夜してたな。

「そう思うなら今から寝室行って寝ろ」
「でも明日閉め切りの書類が」
「ダメだ。ぶっ倒れる程やっといてまだ仕事すんのかよ。体壊すぞホント」

相変わらず呆れる程の仕事中毒っぷりだ。
倒れるまでやってて明日の締め切りの心配ってどういうことだ。
シオンの側にしゃがみ、肩を抱いて起こしてやりつつ。
先ほどの光景を思い出していた。

床に散らばる書類、それに埋もれる親友。

言い換えると、
床に散らばる国家機密レベルの重要書類と、それに埋もれる好青年(と国民に思われている)英雄王。

朝から気の抜けるこの光景が、二週間に一回の頻度で発生している。

何度言っても休憩しないシオンにはなんと言ってやれば良いだろうか。気絶を睡眠にするな、と。


考え事をしていてシオンの肩を抱いたままだったライナは、その顔の近さに気付いていなかった。

「ねぇライナ、あのさ」
「うわ?!な、なんだよ!」

急に目と目が合って、しかも視線が近いのに驚いたライナ。
その金色の瞳の奥まで覗けてしまいそうな…あ、まつ毛長いなシオン…ってそうじゃない。
うっかりほんの一瞬開けてはいけない扉が見えた様な気がするが見えただけだ、まだ大丈夫。

ライナはそう自分に言い聞かせると、何か言いかけていたシオンをとりあえず執務室の隣にある仮眠室へと運んだ。

ちなみに運び方は嫌がらせでお姫様抱っこをしたがシオンからの苦情は全て無視した。

自己管理の出来ない子供の言うことは聞かないと言えば、子供が王様の国なんてライナは嫌だろ?だから俺は子供じゃない。なんてくだらない話をしたが余談だ。






 仮眠室とは言えど王様の部屋。質素ながらもベッドや枕は見ただけで良質そうだ。
きっとシオンは別に安いものでも良いと言ったのだろうが、部下達が仕事中毒の王様の為に少しでも癒しをとローランドでも選りすぐりの良い品を揃えたに違いない。
それだけこのシオンという男は周りから愛される存在だった。

「ライナー添い寝してよ」
「は?いやだよ」

両腕を伸ばしてきたシオンをベッドに乱暴に下ろすと、ライナは踵を返した。
しかしぐいっと服の端をシオンに掴まれてその場から動けなくなる。
一体どうしたんだシオンは。
徹夜のし過ぎで頭パーンってなったんじゃないか?
なんとかは叩けば直ると言うし。
たぶんそうだな、よし。


「いった…いきなり頭叩くなよ」

ちょっと痛かったのか涙目になるシオン。
そんなに力は入れてないからたぶん演技だ。あざとい。

「ん、叩けばその頭も直るかと思ってな」
「ひどいなぁもう、本気なのに。それにライナだって寝たいだろ?俺の隣で」
「そうだなぁ、寝たいかもな、その高級ベッドで。あ、仕事狂のどこぞのアホターレは要らないから」
「あはは、照れなくてもいいんだぞ?」

爽やか笑顔で片目を閉じてウインクするシオン、腹立つ。

「絞め殺してぇえええええええ!!だいたい男二人じゃベッド狭い…」
「何言ってんだよ、狭くないぞ?王様のベッドはもちろん『キング』サイズ☆」
「うわ…最悪。その冗談寒いぞ」

そのどや顔はなんだ。
ライナはいかにも寒いという感じで腕をクロスさせて両腕を摩った。

「寒いならなおさら、俺と一緒に暖まろうライナ」
「もっと鳥肌立ったわ!」
「あははは、ライナは面白いな」
「うるさい、いじめっ子め。ちゃんと休憩取れよ。俺はまた500時間後くらいに来るから」

そう言って今度こそ部屋を去ろうとシオンの手を服から剥がすと、ライナは扉の方へ向かった。
本音を言うとベッドに横たわるシオンを見ていたら何だか本当にこのまま添い寝しても良いんじゃないかって思えてきて、そんな考えに至る自分に戸惑う。
その触り心地が良さそうな髪を手や指ですいてみたいとか、その意思の強い瞳にずっと映されていたいだとか、もっとその滑らかな肌に触れたいとか、その唇に――
そこまで考えてライナは思考を止めた。
これ以上は本当にやばい。

「そうだライナ」
「んあ?なんだよ」
「お前最近風俗店に入り浸ってるんだって?」
「ぶっ!?……え、何?なんのこと」
「しらばっくれても無駄だぞ。部下に調べさせたから。ほら、これ調査書」

そう言ってシオンはベッドサイドの家具の引き出しから書類を取り出しライナへと渡した。

「うわ…俺のお気に入り枕のメーカーまで書いてある…仕事狂からストーカーにジョブチェンしたわけ?シオン」
「やだなぁライナ、俺はジョブ:王様だよ?サブクラスにライナ専用いじめっ子って付くけど」
「そんな王様廃業してしまえ」
「それで、話を戻すけど、お前がお気に入りなのはレイルード歓楽街の中でも裏路地にひっそり建ってるホテヘル御用達のホテル『レイルードにゃんにゃん』だな」
「誤解だシオン、俺は別にそこお気に入りとかじゃなくてだな…」

シオンは何やら弁明を始めたライナの手からまた書類を取り返し読み始めた。

「えーっと店のプレイ内容は玉舐め、アナル舐め、69……M性感……ライナ…やっぱりお前マゾだったん…」
「ちっがああああああう!ぶっ飛ばすぞお前!人の話ちゃんと聞けよ!!」
「わかってるわかってる、ライナが変態色情狂だってことは」
「それも違う!!いいか、俺は確かにその店に2週間くらい泊まってるが」
「あ、やっぱり利用してるんだ」
「利用はしてない。ただ泊まってただけだ。純粋に睡眠のためな、ここ重要」
「ふーん」
「…おい、信じてないだろ」
「…ふふっ……ははは」

急に笑い出したシオンにギョッとするライナ。

「な、なんだよ」
「いやいや、その慌てぶりがおかしくってさ。もういいかな。はい、これ続きの書類」
「は?っておう……なお、ライナ・リュートは宿泊のみを目的としているようで利用については一切していないようである…っておま、知ってて言ってたのかよ」
「ああ。けど目的だけはわからなくてね。だからそれはライナ本人から聞こうと思って」
「回りくどいな。そんなに知りたかったなら最初から普通に聞けよ。こんな調査される程大した理由じゃないし」
「そう言われると余計に知りたいね」

ニッコリと笑ったシオンに隠す気も無くなってくるライナ。
元々隠す程のことでもない。
ライナは右手で自分の後頭部をガシガシと掻くと、あーそのーと意味の無い発言をした。


話は二週間前にさかのぼる…。




徹夜地獄からやっとこさ自分の宿に帰還したライナはベッドに勢いよく倒れ込んだ。
柔らかく包まれる体、体中から力が抜け弛緩してゆく眠りへの至福。
これがあの鬼畜王シオン・アスタールの高級ベッドだったならばもっと最高なんだろうが。
久しぶりに抱きしめたマイ枕はなんだが湿気っていて残念だった。

「あたらしいまくら…ほしい……な…ぁ」

ライナはそう言い残すと夢の国へと旅立った。


翌朝。

「なにこれ……まくら?いや、枕だよな。うん、枕だ」

そこには奇妙な光景が広がっていた。
床にも枕、机にも枕、ベッドの上などライナが寝ていた場所以外は全て枕に埋め尽くされている。

「これは…俺の夢?そういや寝る前に枕欲しいとか思ったっけ。夢は願望が反映されるって言うしな…別にこんなに要らないけど」

ライナはこの異様な光景にそう納得をつけると、再びベッドへとダイブし手近な枕を掴んで寝た。
夢だろうがどこだろうが睡眠をまず第一と考える。
ライナらしい行動だった。






「……で?これライナが寝まくってたってことしか伝わってこないんだけど」

シオンは肘をつきながらやや呆れ顏でライナを見ていた。
ライナは手を振ってそれを否定する。

「話は最後まで聞けって。ここからなの」
「手短にな」


――再び回想へ


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