Prisoner of Azkaban
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夏、ある男がホグワーツを尋ねた
「ほう、珍しいお客さんじゃのう」
「お久しぶりです、アルバス」
「元気でやっとるようでなによりじゃよ、オーガスティン」
アイスブルーの瞳の老人と、無機質なグレーの瞳の男が握手を交わした
部屋には午後の熱い太陽の光が差し込んでいるが、雰囲気は凍るように冷たい
「さて、魔法省の危険生物取締り局、局長殿が儂になんのようかのう」
「今回の脱獄事件に対する処置として“これ”をホグワーツに派遣することが決定されましてね」
男は高慢なしゃべり方し、後ろに立っていた青白く痩せた女の子をダンブルドアの方に押した
「5年ほど前だったかの、この子には入学許可証を送ったはずじゃが」
半月眼鏡から覗く瞳には怒りが浮かんでいた
「魔法省が獣をホグワーツに入学許可する訳ないでしょう、“これ”は人間ではない」
男は嘲笑うように言った
女の子はそれを聞いても無表情で感情がないかのようだった
「その子をそんな風にしたのは誰じゃったか、オーガスティン」
「魔法省のプロジェクトであって誰などという問題ではないでしょう」
男はダンブルドアの反応を楽しむように一言一言、言った
「そしてヴォルデモートの消えた今、“これ”はただの失敗作の生き残りに過ぎない、魔法省における厄介な存在でしかないのですよ」
男は女の子を見た
男は続けて言う
「貴方に拒否権はありません、ダンブルドア」
男の足音が耳障りな音をたてている
「魔法省命令であるディメンターの校内残留を許可されなかったのですから」
「校内にディメンターなんぞ入れたらどうなることか」
「そんなことはどうでもいい、とにかく“これ”を今年からハリー・ポッターと同学年に転入させ身辺警護をさせる」
男は女の子を顎で示した
「警護は優秀な職員たちで十分じゃ」
ダンブルドアはきっぱりと言った
しかし男はそれ無視をして話し続けた
「“これ”の任務は3つ、1つ目はハリー・ポッター及びホグワーツ生を守ること、2つ目は人狼リーマス・J・ルーピンの監視、3つ目は―…」
「魔法省とホグワーツのパイプ役じゃな」
ダンブルドアが鋭く言った
「まさか!魔法省がホグワーツにスパイでも送り込むと?老人は面白い冗談を言う」
男は口元を歪めたが目にはきつい光が浮かんでいた
「3つ目はシリウス・ブラックに関する情報収集ですよ」
「…わかった、その子の転入を許可しよう」
男はその言葉に満足そうにせせら笑いを浮かべた
「病気がちで入院していた13歳、コウ・ヴァン・クレンツだ、同じ苗字を名乗らせるなんて虫酸が走るが上の命令でしてね」
女の子はうつ向いた
「寮監までならば“これ”が魔法省の犬であることを教えて問題ないでしょう」
「魔法省の役人であると伝えるかのう」
「それは魔法省の品位が疑われるので止めていただきたいですな」
「コウ、9月1日にまた会おうかの」
ダンブルドアは女の子に顔を向け、微笑みかけた
「ダンブルドア、その子を手名付けようとしても無駄ですよ、きちんとしつけてありますから」
女の子はびくんと震えた
「さて、用件は以上です。貴重なお時間を頂いてしまって申し訳ありませんでしたな、ではまた。」
「オーガスティン、君はいつか後悔することになる」
男は鼻で笑い、部屋を出た
女の子も後に従った
「セブルス、今のをどう思うかの」
黒い人がするりと部屋の隅から姿を表した