Prisoner of Azkaban

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「いつもトラブルの方が飛び込んでくるんだ」

「ハリーを殺そうとしている狂人だぜ。自分からのこのこ会いにいくバカがいるかい?」


コンパートメントのドアが静かに開いた

「あの―……ここに座ってもよろしいですか?」


入口には顔色の悪い痩せた女の子が立っていた


柔らかな髪は黒く、はっきりとした瞳は蜂蜜色をしていた

整った顔は表情が無く、顔色が悪いせいで人形のように見える

「あ―…どうぞ」

ロンがハリーとハーマイオニーをチラリと見た後、気まずそうに言った


女の子はルーピン先生とロンの間に腰をおろした

「えっと君、何年生?初めて会うよね?」

まずハリーが口を開いた

「コウ・ヴァン・クレンツといいます、3年生に転入します」

「転入?」

「転入だなんて初めて聞くわ!」

3人とも怪訝そうな顔をした

「病気でずっと入院していたので、入学に間に合いませんでした」

「そ、そうなんだ」

「私はハーマイオニー・グレンジャー、グリフィンドールの3年生よ」

ハーマイオニーが自己紹介をした

「僕はハリー・ポッター、よろしく」

「よろしくお願いします」

「僕、ロン・ウィーズリー、よろしく」

「よろしくお願いします」

女の子は律義にお辞儀をした

ハーマイオニーが思い切って聞いた

「あなたなんでそんなに丁寧なの?私たち同い年じゃない」

「あ……私…同い年の人と話の初めてで…」

女の子はおたおたと言った

「それで…その…どんな風に話していいのか…分からないんです」

3人は顔を見合わせた

「ずっと病院に居たってこと?」

「はい」

「うわー、僕だったら気が滅入っちゃうな」

「ロン!」

ハーマイオニーがロンを小突いた


「どんな風に話したらいいかはそのうち分かるわ、私たちには気を使わなくていいのよ」

ハーマイオニーが優しく言った

「えっと……」

「こういう時はありがとうって言うんだ」

ロンが口を挟んだ

「ロン!」


「ハーマイオニー、ありがとう」

コウは、はにかんだように、少しだけ笑った

ハーマイオニーも嬉しそうだった

「いいのよ!それよりコウ、勉強は3年生からやるんでしょう?大丈夫なの?」


「はい、大丈夫です、父に教わっていました」


つまらなさそうにボーっとしていたロンが急に反応した

「もしかして君のお父さんて、オーガスティン・ヴァン・クレンツ?」


「は、はい」


「知ってるの?」

ハリーがロンに聞いた


「魔法省の危険生物取締り局の局長だってパパが言ってたよ、確か最近昇進して局長になったんだ」

「ロンのパパはマグル製品不正使用取締局の局長なんだよ」

「でも同じ年の子供がいるなんて…」

ロンがコウをまじまじと見た

「養子…なのであまり知られていないと思います」

「あ、そうなんだ」


「危険生物取締り局ってどんなことするの?」

「父はあまり仕事の話をしないので…」

「決まってるじゃないか!マグル製品不正使用取締局よりはましなところだろ」

ロンはその後、最近パパは噛みつくティーカップ事件で残業になったなどという話をした

「今年からホグズミードに行けるわね」

ハーマイオニーが話題が一段落したところで言った

「本ではイギリスで唯一の完全にマグルなしの村だって―」

「あぁ、そうだと思うよ。僕はハニーデュークスの店に行ってみたいだけさ!」

「それって、なに?」

ハリーが聞いた

「お菓子屋さ」

ロンがうっとりと言った

「なーんでもあるんだ……激辛ペッパー……チョコレート……砂糖羽ペン―」

「でも、ホグズミードってとっても面白いところなんでしょう?『魔法の史跡』を読むと、そこの―」

「―それにおっきな炭酸いりキャンディ!」

ロンはハーマイオニーの話を全然聞いていない

呆れたハーマイオニーはコウとハリーのほうを向いて言った

「ちょっと学校を離れて、ホグズミードを探検するのも素敵じゃない?」

「だろうね」

ハリーが沈んだ声で言った

「見てきたら、僕に教えてくれなきゃ」

「どういうこと?」

「おじさんがサインしなかったし、ファッジ大臣もサインしてくれないんだ」

「許可してもらえないって?そんな――そりゃないぜ…マクゴナガルか誰かが許可してくれるよ――じゃなきゃ、フレッドとジョージに聞けばいい。あの二人なら城から抜け出す秘密の道を――」

「ロン!」

ハーマイオニーが厳しく言った

「ブラックが捕まってないのに、ハリーは学校からこっそり抜け出すべきじゃないわ――」


「マクゴナガル先生はそうおっしゃるだろうな」

ハリーは残念そうに言った

「でも…」

「そいつを出したらダメ!」

ハーマイオニーは籠の紐に手をかけていたのだ

オレンジ色の猫が飛び出した

「どけよ!」

「ロン、やめて!」

喧嘩になりそうになった時、ルーピン先生が少し動いたため言い合いはそのまま終わった


ホグワーツ特急は順調に走っていった

昼下がりにはついに丘陵風景が霞むほどの雨が降りだした

その時コンパートメンのドアが開き気取った声がした





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