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綾美が部屋で悲鳴を上げた同時刻、とある研究室にも平等に朝日が差し込んでいた
「あ…またやっちゃった……」
昨夜の帰り際、急に実験の反応が見られたからデータを取っていたのだが寝てしまっていたらしい
実験のマウスは冷たくなってしまっていた
頭の中で数える
これでもう月の半分は研究室で寝泊まりしていることになる
立派なラボ蓄だ
明海は朝からため息をついて、髪の毛を掻き上げた
「お目覚めのところ悪いが…ここはどこだ」
低い声が突然聞こえた
「…え?」
「こちらを見ていただけますかな?」
声の主は不機嫌だ
しかし部屋を見ても誰もいない
首を傾げると、ふと机の上に見慣れないものがあることに気がつく
黒いバービー人形だ
こんなものを研究室に持ち込んだ記憶はない
まだ夢の中なのかな
そう思いながら明海は無造作に人形を掴んだ
「…ぐっ…もう少し優しく持ち上げられないのか!」
人形が先ほどの低音を発した
「…へ?」
「もういい離したまえ!」
人形は手足をバタバタとさせた
確かに人形が手の中で暴れている感触がする
「マウスを殺しすぎて化けてでたのかな…」
明海は毒物生合成経路の研究をしている
そのため実験用の白いマウスに毎日のように毒物を注射しているのだった
最初こそ業者が引き取りにくるまで専用の冷凍庫にマウスの遺体をそっと置き、一々悲しみはしたが、いまではすっかり慣れてしまった
戸惑っていると手中で低音が唸った
「いいから降ろせ馬鹿者!」
「は、はい!」
小さいとはいえ、あまりの剣幕に明海はぱっと手を離した
べしゃっと音を立てて人形は固い机の上に落ちた
膝をついた人形は頭を抱えている
どうやら頭を打ったらしい
「き、貴様……」
人形は顔をあげ、悪意剥き出しの目で睨んだ
「ご、ごめんなさい!」
黒い人形の額がうっすらと赤くなっているのを見て、明海はようやく理解した
人形ではなく、なにやらわからないが、小さな人だ
「あなたは…何者ですか」
小さな人は舌打ちし、呟くように答えた
「セブルス・スネイプ…ホグワーツの元教授だ」
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