ホームズと呼べ!

□ホグワーツ七不思議
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賢明な読者の諸君は、この事件簿をまたもや開かざるを得なくなったわたしの心情をよくご存じだろう

残念な心情部分をつらつらと10ページほど書いても良いのだが、
隣に座る我らがスネ―…ホームズがそれを許さないので、早々に本題に入らせていただこう

心からお悔やみ申し上げてくれているであろう読者諸君!

クリスマスの事件からはテストに追われ、気がついてみると長い夏休みに突入しようとしていた

わたしは生まれ故郷の日本に行くことにしていたので、会えなくて残念だとスネイプに別れを告げた

中庭の緑は青い空と白い夏の雲に鮮やかに映えている

「貴様…いやに嬉しそうだな」

景色の清々しさと裏腹にスネイプは薄黒い顔をした

「いやいやいや滅相もない!」

「安心しろ」

スネイプはわたしの頭をぽんぽんと叩いた―…奴はいつの間にかわたしより頭ひとつ分も縦に伸びていたのだ

少し優しい手つきにどぎまぎしているとスネイプがにやりと笑った

「今後の素晴らしい計画について手紙で知らせる」

「へ…?」

「全て1時間以内に返信しろ」

「えええやだぁあ」

スネイプがわたしの頭をばしんと叩いた

「うるさいこのアンポンタン!」

「京都とかに遊びに行こうと思ってたのに…」

夏休みまでスネイプの奴隷(スネイプ曰く助手である)なんて最悪である

こんな奴にどきどきしていた自分が馬鹿らしさを通り越して不敏でならない!


宣言通りスネイプから手紙が届いた

「ボーイフレンドから?」

「お母さん!そんな身の毛のよだつ冗談やめて!」

今すぐ火にくべたい衝動を必死に抑えた代わりに封筒を破り捨てた

『親愛なるワトソン君

はじめての事件簿の出版に向けての加筆修正はどうだね?』

なんの話だ

『モデルがいいから執筆はさぞかし楽だったろう』

だからなんの話だ

『付属の計画表を頭にいれておきたまえ、そのスカスカの頭にな』

とりあえず便箋は丸めてゴミ箱に投げつけた

―――――――――――――
 4年
9月七不思議をすべて片付ける
10月ホグワーツの伝説について解き明かす
11月このあたりで一発殺人事件を解決
12月はじめての事件簿がミリオンセラーに



こんな調子で1メートルほど続く年表のようなものが付属していた

ご丁寧に卒業後まで書かれている

わたしはマッハで小さく折り畳み読みかけの本のしおりとして使うことにした

スネイプの手紙を読んだ時間は3分ほどに過ぎないはずが、精神的ダメージをくらうには十分だ

『9月 七不思議をすべて片付ける』

心を静まらせ忘れようとしたが来月の予定が脳裏にテロップのように流れてくる

七不思議はあと5つ

そもそも七不思議なんて眉唾物で寮や学年によって様々である

それを一ヶ月でスネイプはすべて解決しようとしている

嫌な予感しかしない

わたしは新学期に向けて宿題より先に
スネイプにする言い訳をたくさん考えることにした

スネイプは単純に課題やってないからと言っても手伝ってくれてしまうからそういう理由は経験上駄目だ

そんなことに頭を悩ませていると夏休みが明け、ホグワーツ折り返し地点である四年生に進級した

「やぁワトソン!送った計画表は頭に入れたな?後でテストす――なにを読んでるんだ」

スネイプがわたしの読んでいた本を奪い取った

『108の言い訳―これでもう大丈夫、飲み会も嫌な付き合いも上手にお断りできます!』

スネイプ対策の本を見られてしまった

「なるほど、話術を身に付けるのも助手として大切だからな!」

スネイプは満足そうに本をパラパラとめくった

「ワトソン君も計画達成のために努力していたとは、嬉しい限りだ」

スネイプはどうやら解釈を180度、間違えたらしい

「あとにしようと思っていたが早速今からテストだ!」

スネイプはどこからともなく羊皮紙を取りだしわたしの目の前に置いた

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