ホームズと呼べ!
□ホグワーツ七不思議
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さっそくこの"事件簿"とやらを開かなくてはいけなくなったのは誠に遺憾であるのだが、読者諸君!
競技場の怪事件から数日、わたしの身の回りには厄介な現象が起きていた
触れてもない羽ペンが授業中に浮いたり、風もないのに教科書がぱらぱらと捲れた
これなんかは害のないほうで、薬学の授業では材料が鍋に勝手に投入されるのにはほとほと閉口した
夜中にベッドのカーテンが開いたりしまったり、幽霊の類いに耐性のあるホグワーツの生徒もさすがに呆れている
「なんかとり憑かれてんじゃない?」
同室の女の子たちは初めこそ好奇の目で見ていたが、こう何日も続くと除霊を勧めてきたりした
「心当たりがあるようなないような……」
「塩撒いてみたら?」
「ハ○タの塩でいいかな」
「ハカ○?」
「ハ○タといいつつ実はメキシコかどこかの塩」
「それよりは岩塩のほうが効きそう」
「それはたぶん物理的な話でしょ」
オマケにスネイプvs悪戯仕掛人の構図は悪化し、毎日スネイプは擦り傷だらけだった
「大丈夫?」
スネイプの新しくできた傷に薬を塗りながら言った
「そんなことよりお前の変な現象はどうなった」
スネイプがそう言った矢先、握っていた薬瓶が手からすぽんと抜け宙に浮いた
「健在のようだな」
スネイプは嬉しそうに言った
「塩撒けって友達に言われた」
「そんなことしたら貴様が死んでしまうだろう」
意味が分からずキョトンとしているとスネイプは宙に浮いていた薬瓶をつかみ、反対の手でそのままわたしの頭をぐるぐると回した
「ナメクジ並みの脳みそのアホってことだ!」
「困っているお友だちには優しい声をかけましょうって習ったでしょ!」
「誰が友達だ、誰が」
「スネイプとわたし」
「探偵と助手だ!あとホームズと呼べこのクズ助手め何度言ったらわかるんだ」
「素直になれって行ったのに」
透き通るような声がした
「その声は…」
スネイプが勢いよく振り返った
「ジュード!」
白い男の子が青い空に浮いている
陶器のように白い肌と暗い緑の瞳
砂のような色の緩い巻き毛の髪が風もないのにさらりと揺れた
「やぁ、ナオ」
前回は暗い中見たのでいまいち分からなかったが、昼間見るとかなり綺麗な男の子で
ふわりとわたしの手をとり唇を落とした―幽霊だから仕草をしたにすぎないのだけれど
「貴様!」
スネイプが噛みつくように言い、わたしの手をジュードからひっぺがした
「やぁやぁ!ホームズ君」
ジュードは大袈裟な身ぶりで片手を胸にあてると優雅にお辞儀をした
微笑を浮かべた少年は絵画のようだ
「貴族みたいで素敵ね」
わたしが思わず言うとスネイプがわたしを睨み付けた
「貴族さ」
ジュードが暗い緑の瞳を細くした
「 ジュリアン・ド・クロイ」
「ジュリアド…?」
「真に受けるな、ワトソン」
スネイプの鋭い声にジュードは肩をすくめた
「そうそう…別にそんな話がしたくて今日はここに来た訳じゃない」
ジュードは繊細な白い指で自身の髪をくるくると弄んだ
「ここ数日で君たちの話を聞いたよ」
「僕は有名だからな」
スネイプが胸を張った
「トラブルメーカーなんでしょ?」
スネイプが肩を落とした―無論わたしもだ
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