桜の咲く頃に月は昇る

□〜明日へ〜
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1、あたたかい陽射し

この時は、私も大もまだ何も知らずに笑ってた。

「あ〜ぁ、今日も忙しかったな。」

「そうね。でも、トーマがいたから助かったわ。」

「お前なぁ、トーマ、トーマって、俺もがんばったのに…。」

そう言って拗ねてしまった。

「そうだったわね。ごめん。」

「あっ、いっけねぇ!学校に忘れ物しちまった!どうしよう!今日どうしてもいるのに!」

「えぇっ!もう、しょうがないなぁ。学校まで送って上げるわ。」

「いや、そこの駐車場まででいい。すぐに取りに行けるし。」

あっそうと言われた通りに車を駐車場に停めた。

すぐ戻ると車を降りて走って行く。

…あれから、30分が経った。

遅い!何やってるの!

という事で大の学校に迎えに行く事にした。

近道をしようと公園の遊歩道を歩いていると、いかにも怪しい男の人が近づいて来た。

「殺してやる!お前なんて!」

その男は、そう言いながら私の腕を掴んで持っていたバックからナイフを取り出して振り上げた。

私は、殺されまいと必死で抵抗した。

ナイフの刃が服の胸の部分を軽く霞めた。

やっとの思いで男を逃れて、私は駐車場への道を戻る。

男はしつこく私を追いかけて来る。

「もう!なんでこうなるの!最悪なんですけど!」

私は、とっさに茂みに隠れた。

男は、そのまま走り去って行った。

男に切られた傷が痛む。

「助かった…。なんなのよ…。」

ほっとしたのもつかの間、私はとんでもない事を思い出した。

「あっ、あの先には、大の学校があって…。だとすると…まずい!大がこっちに向かってる!」

体が恐怖で震えていた。

「大丈夫よ…。だって、大は日本一のケンカ番長だって自分で言ってるし…。そうよ…。絶対大丈夫だよ…。」

冷静になれと自分に言い聞かせてみるものの、震えは収まらない。

無茶をしないで!


―お願い!逃げて!


体の震えが収まって、ようやく動けるようになったので、もと来た道を歩く。

男に襲われた場所に来た時―


「なにこれ…大?」

私がそこで見たのは、体中を刺されて血まみれで倒れている大だった。

周りをよく見わたすとそこにあったベンチが血まみれなのが見えた。

ゆっくりと近づいて名前を呼ぼうと顔を触る。


あれ、なんか変。


大の首が繋がってない。

それを見て私は確信した。

大は…


殺されたんだ!


「いやーぁっ!」


私の記憶はそこから無くなった。
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