桜の咲く頃に月は昇る
□〜夏の想い出〜
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灼熱の夢想
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ある夏の日、僕は、火が嫌いになった。
―『みんな、逃げて!逃げてぇ!』
この言葉を最期にあなたは僕たちから離れてしまった。
「ねぇ、大、任務が早く終わったから、一緒にカラオケに行きましょう!もちろん、トーマも行くわよね!?」
その日は、珍しく任務が早く終わりどうしようもないほど、暇を持て余していた。
「いいですね。行きましょう。」
隊長たちにお先に失礼しますと言って本部を出た。
「友達と行ってるいい店があるのよ。ここからでも歩いて行けるから、ほら、ぼさっとしない!」
そう言って僕と大の手を引いて走る。
散々引っ張られてある有名カラオケ店に入った。
僕たち三人は店の奥の部屋に通された。
「よかった!ここかなりの人気店だから滅多に部屋空かないのよ!」
ついてるわとフロントに飲み物と菓子を頼み、1曲ずつ歌う。
この店の真下が飛んでもない惨事に見舞われている事を知らずに・・・。
・・・ジリリリーッ!!!
「あれ?なんだか、聞こえないかい?非常ベルみたいな音が・・・。」
僕が歌の終盤を歌っていると、微かに聞こえた非常ベルの音で辺りは静かになった。
・
「えっ?気のせいじゃないの?」
淑乃さんの一言でそうかもなと思い、しばらくこの場で続けていると店の従業員の女性が慌てた様子で部屋に入って来た。
「お客様!すぐに避難してください!
火事です!」
「えっ!?ウソだろう!早く行こうぜ!」
「言われなくてもわかっている!」
僕たちは、従業員の指示に従い、部屋を出て避難経路を伝って避難場所に向かっていた。
「はぁ、なんでこうなるの!?最悪なんですけど!あら・・・?」
「どうしました?淑乃さん。」
「赤ちゃんの泣き声・・・?」
「はぁ?ここに残ってんのは俺たちだけだろう?」
「
「ちょっとだけ、行ってみる!トーマと大は、先に逃げてて!大丈夫!確認したらすぐに行くから!いい!?」
「お客様!」
「おい!待てよ!淑乃!」
「淑乃さん!」
「私は、大丈夫だから!みんな、逃げて!逃げてぇ!」
そう言って淑乃さんは、元来た避難路を戻って行った。
避難場所に着いた僕と大は、淑乃さんの言葉を信じ、待っていた。
だけど、いくら待っても淑乃さんは、出てこない。
・
―まさか・・・。
淑乃さんは・・・。
僕が一抹の不安を感じたのと同時にそれは起こった・・・。
―ガシャーン!
「キャアァァ!」
ガラスが割れ、勢いよく燃え盛る
「消防はまだか!?」