声―ボクたちはその美しい蒼い花の名前を知らない―

□第1章、邂逅-イノセントブルー-(キリハ目線)
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それから、数日後。


今日のスケジュールは二十代女性の性別適合手術の男性器の移植手術と、三十代女性の肝臓移植手術…。

2件か。

俺の体力を考えるとこれくらいが限界だ。

『スゲーッ!食堂が、レストランだ!あっ、旅行代理店やコンビニもある!あっ…。』

『タイキ、あんまり走り回らないでよ。』

『はぁい。』

「廊下が騒がしいな。ドアを閉めようか?」

「いいえ。結構です。」

「男性器の移植については患者の承諾は得ています。」

「彼の性器は平均的な男子のモノよりも小さいですからね。こればかりはどうしようもない。」

「先生、肝炎患者の方についてですが……」

俺は無意識に聴覚を遮断する。

俺にとって、先生たちのミーティングというのは煩わしい雑音でしかない。

「このことについて君はどうする?キリハ?」

「あっ?!」

しまった!

「おっ、お任せします……。」

「はあ……。それでは……」

俺がこう言うと先生は必ずため息を漏らす。



手術の準備をしていると……

「少しは積極的に意見してきたらどうだ?」

「……はい。」

「何のためにお前をミーティングに参加させていると思っているんだ?」

「すみません……。」

肝臓移植手術を終えたその日の夕方…。

夕飯の混雑時にA定食(魚メイン)と一緒に整理券を渡された俺と同じのくらいの男が前の席に座った。

「よう、ここ座るな。」

「……。」

返事はしなかった。

煩わしかったから…。

夕飯を食べ終えたそいつは、整理券の裏に何か書いて別れ際、俺の胸ポケットに押し込み、

「暇な時、いつでも来いよ。じゃあな。」



そう言ってレストランを出た。

「…工藤タイキ…。」

その名前に見覚えがあった。

今日、ここに入院することになっていた、拡張型心筋症のクランケか。

確か…“治療不可”だったはずだ。

まぁいいか…。

次の手術の準備をしないと…。

レストランを出て部屋に戻る途中…

―ボグッ!

「…うっ!」

清掃員とすれ違い様に鳩尾を殴られ、よろめいた隙にダストケースに入れられてしまった。

『…よし。この子さえいれば…みんな助かる…この子さえいれば…。』

―誰だ?

助けて…先生…

タイキ…。

こんなことになるならお前と話してればよかった…。
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