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□雨に願った
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強く降る雨は俺の体を打ち付けた。
鼻をつくにおいは血のにおいだ。
どれだけ雨が強く降ろうが俺はそこから動かなかった。
この雨が全てを流してくれるような気がしたから・・・
雨を蹴る音がする。
その音は俺の後ろで止まった。
「ユーリ・・・」
顔を見なくても誰かなんて分かる。
雨の音がさっきよりもいっそう強く聞こえた気がした。
「ユーリが苦しんでるような気がして・・・それで」
「ユーリ、君はまた・・・」
フレンの声は戸惑いや悲しみ、色んな感情を含んでいた。
顔を見ると今にも泣きそうな顔をしていた。
「ユーリ、今君はどんな気持ちなんだい・・・?」
「さぁな・・・、わかんねぇ」
空を仰ぐと雨は容赦なく俺の顔を濡らした。
フレンは動いたかと思うと俺を抱き締めた。
「ごめん・・・ごめんね、ユーリ・・・」
雨で泣いてるかどうかなんて普通は分からないのに俺は思った。
あぁ、泣いてるって。
ただただ涙を流しながらひたすらフレンは謝る。
「何でフレンが謝るんだよ・・・」
「君の手を・・・僕はまた汚してしまった」
「今さらじゃねーか・・・」
そうだ、今さらじゃないか。
俺は今までも手を汚してきている。
だから謝るな、そうやって何度思ったことか。
だけど、それをフレンに言えないのは俺の変な甘えかもしれない・・・
「僕は騎士団長になったときに誓ったんだ。もう、ユーリの手は汚させないって・・・なのに僕は!」
フレンは手を力強く握りしめた。
目から溢れる涙は止まることを知らず流れては雨にまぎれて消えていく。
俺がしたことは罪だ。だけど、俺の中に後悔はない。これは俺の選んだ道だ。
ただ、俺が罪を犯すたびにフレンは涙を流した。
フレンの涙を見るたびに俺は後悔する。
また泣かせてしまった、と。
フレンの感は間違ってなかったのだ。
俺は確かに苦しい思いをしている。
あぁ、またフレンが泣いてしまうのかって考えると苦しくなる。
罪を犯すことよりも悪口を言われることよりも何よりもフレンの涙を見ることが俺には辛くて苦しい。
フレンは俺が手を汚すことで変わっていくことが怖いのだろう。
声に出しては言わないが何度フレンに謝ったことだろう。
雨がやむ気配はない。
この雨が俺の汚れと苦しみを・・・フレンの恐怖を全て流してくれたらいいのに


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