稲妻
□君のことが知りたいんだ
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「あ・・・あのさ」
「ん?何だ?」
「ちょっと質問してもいい?」
「質問?」
「あ、うん。質問っていっても好きなものとか聞いたりするだけだからね!だから、してもいい?」
首を傾げた際に後ろで括られた緑の髪がふわりと揺れた。
「別にいいけど何で俺?」
「え、いや皆にも聞いてるんだよ!?風丸がマダで、だから・・・」
質問をすると緑川の顔は徐々に赤くなって俯いていった。嘘だ、とすぐに分かった。俺は綺麗な心をもて余してるわけでもないわけで意地悪い顔を浮かべると更に緑川に質問をする。
「何で嘘ついてるんだ?」
「っ!ちが」
俯いていた顔が上がると俺は緑川の頬に手を添えて軽くリップ音を立ててキスをした。離れて見えた顔は更に真っ赤になっていた。
「風丸!?」
「緑川が本当のことを言わないなら・・・俺も嘘を言うかもな」
あぁ、俺は何て悪いんだろうな。緑川を困らせて楽しんでる。
「え・・・?あ、俺・・・」「何?」
ちょっとだけ強く冷たく言うと今までの表情とは一転、涙目になって肩をビクッと震わせた。
しかし、何か決心を決めたように拳を握ると俺の顔を見た。
「・・・ごめん。俺、風丸に嘘ついた」
「うん、知ってる」
「俺が質問するのは風丸だけ。だって・・・俺」
少し間を置いてから緑川はふにゃっと屈託のない笑みを浮かべながら言った。
「風丸のことが大好きだもん。風丸のことがもっと知りたかったんだ」
あぁ、可愛い。
心の底から純粋にそう思った。
当の緑川は、自分で自分の言ったことに恥ずかしくなって赤面したりしている。
抱き締めたい。その感情が生まれたときには、俺は緑川の腕を掴んで引き寄せ、抱き締めていた。
「緑川、ありがとう。大好き」
「うん・・・あのさ、もう怒らない?」
「最初からおこってないって」
「え!?本当・・・?」
「本当だって」
緑川は俺の腕の中で少しだけうー、と唸った後、静かになった。
静寂が訪れる。だけど腕はとかない。
抱きしめている間、俺は緑川という存在がそこにあることを感じることができる。
幸せだな、って思った。
緑川を近くに感じ、緑川に愛されている。幸せ以上の何でもない。
「「あのさ」」
お互いの声が重なって思わずお互いの顔を見ると目があった。
「風丸からどうぞ」
「いやいや、緑川から」
「風丸から!!」
緑川の勢いに押された俺は少し納得がいってないが口を開いた。
「俺、今すっげぇ幸せだと思った」
「え?」
「緑川が側に居て愛されてる。すっげぇ幸せ」
「あのね、風丸」
「ん?」
「それ、俺も思った。」
「!?」
「風丸に触れられて愛されてる。すっごく幸せなんだ」
お互いの顔を見つめて笑った後、また抱き締めあった。
俺達は予想以上に繋がっていた。
同じように幸せだと感じていた。
純粋に嬉しかった。
「んで、緑川?質問はいいのか?」
「させていただきます!」
『君のことが知りたいんだ』
(好きなものは?)
(ん〜・・・緑川?)
(俺はものじゃないよ!?)