稲妻

□今、気づく
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「それでな、円堂」
「風丸ー!!」

俺が食堂で朝食を食べた後話をしていたら、部屋の外から俺の名を呼ぶ声とバタバタと廊下を走る音が聞こえた。

「・・・」
「風丸くん、今日もなんだね」
「今日もってかココ何週間か毎日だから」
「風丸も嫁の面倒見て大変だな!!」
「ちよ・・・円堂!?」

風丸!!、と大きな音がしてドアが開くとそこには案の定皆がいう俺の嫁、緑川リュウジが立っていた。

「ちょっと、緑川さん!ドアは静かに開けてくださいって言ったじゃないですか!!」
「あ、ごめんごめん」
「もー、次からは気をつけて下さいよ?」

音無に怒られた後、緑川は俺の側に立って服のポケットからくしとゴムを出すと

「風丸、髪の毛結んで!」

と、またそれはそれは可愛らしい笑顔で言った。
自分でも結べるくせに緑川はあえて俺に頼む。
何でも俺の髪の毛を結ぶときの手が好きらしい。俺にはよく分からん。
まぁ、俺は俺で緑川のふわふわとした髪に触れることが出来るのは嬉しいことなんだけどな・・・

「まったく・・・」
「結んでよ、お願い!!」
「頼まれなくても結んでやるよ、ほら今日はココ座れ」
「ありがとー」

俺は席を立つと緑川に座らせた。
周りからは古典的なはやし声が聞こえたがそれももうなれた。
緑川はまだ馴れてないみたいで俯いて顔を少しだけ赤くさせていた。

「大丈夫か?」

と周りには聞こえないように耳もとで言うとうん、とした返事が聞こえた。
そして、髪を結びはじめて数分後

「うん、まぁこんなもんだろ」
「出来た?」
「おー、出来たぞ」
「わー、ありがとー」

緑川は自分の髪を触っては喜んでる。

「それにしても、風丸も手慣れたものだな」
「そりゃぁ、1日に二回も髪を結んでたらな」
「それもそうだな」

鬼道に自嘲気味に笑って答えた。
緑川のほうを見ると円堂とヒロトと話をしていた。

「緑川は何で髪の毛長いんだ?」
「え、何となく?」
「ふーん」
「それにしても、緑川の髪って綺麗だよね。ふわふわしてるし」

ヒロトが緑川の髪に触れようとした瞬間、俺はヒロトの腕をつかんでいた。

「風丸くん?」
「風丸?」
「え?あ、悪いな・・・つい」
「変な風丸ー」
「ついで人の腕って掴むものなのか?」
「それは違うぞ、円堂」

緑川はクスクスと笑った。
俺がヒロトの腕を離すとまた、何事もなかったかのように話始めた。
ヒロトの腕を掴んだ理由なんて分かっている。
ヒロトに緑川の髪に触れてほしくなかった。ただ、それだけ。

「(俺って・・・)」


『今、気づく』
(こんなにも緑川のこと好きだったんだ)


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