稲妻

□今始まる君との恋
1ページ/1ページ


好きだ、って気づいたときにはもぅ手遅れの恋だったなんてよくあること。
今までの恋はそうだった。
大好きの中でも俺にとって特別、と気付いたときその相手には誰か特別な人がいた。
晴矢と風介は二人ともが大好きの中の特別。だけど、二人はケンカばっかするものの誰よりもお互いを愛していた。それは、俺が入り込む隙間がないほど・・・。
緑川は最初から大好きだったけどその大好きが友達なのか恋愛感情として好きなのか分からなかった。そうやって気持ちが決まらないうちに緑川は大切な人を見つけた。でも、コレはずっと前。
今、俺が好きな人――それが同じチームで同じようにサッカーをしている吹雪くん。
誰にでも優しくてそれでいて誰よりもいろんな面で強かった。
そんなところに気づいたら惹かれていた。
だけど、今までと同じで吹雪くんにも大切な人が居る。
前に円堂くんたちが話してたのを聞いた。
『吹雪、好きな人居るんだってな!!』
『キャプテン!?何で知って・・・』
『ほぅ、それは初耳だな』
『それで誰なんだ?』
『そんなの言えないよ!!』
あの時の吹雪くんの顔は今でも覚えてる。すごく真っ赤だった。
誰も吹雪くんの好きな人は知らない。みんな予想して染岡くんだとか豪炎寺くんだとか言ってる。
だけど、俺はみんなみたいに笑って予想なんて出来ないよ。
吹雪くんが大好きなんだもん。吹雪くんには幸せになってもらいたい。だけど、俺はそんなに優しい人じゃないんだ。吹雪くんを幸せにするのは他の誰でもなく俺がいいから。
好きな人に好きな人が居ることより辛いことなんて今の俺にはない。こんなにも辛いならいっそのこと諦めようか、と何度も思った。だけど諦めきれなかった。だから、俺は決めたんだ。
どうせ叶わない恋なら諦めずに告白しようって。ちゃんと気持ちは伝えようって。
そしてその日は来たんだ。

「ねぇ吹雪くん、話あるんだけどいい?」
「うん、僕もね。ヒロトくんに話したかったんだ」
「俺に?」
「うん」

吹雪くんの部屋に行くと快く中に入れてくれた。そして、俺に話があると言った。何の話なのか全く想像できなかった。

「それで・・・話って?」
「先に吹雪くんからいいよ」
「そう・・・じゃあ」

そう言って吹雪くんは話はじめた。

「こんなこと言ったらヒロトくん困るかもしれないけど・・・僕、ヒロトくんのことが好き・・・なんだ」

吹雪くんは頬を紅潮させながら言った。
俺は瞬間的に自分の耳を疑った。俺のことが好き?何で?吹雪くんには好きな人が居るはずで・・・

「ねぇ、吹雪くん」
「あ、返事はいいから!!」
「え?」
「ヒロトくん・・・好きな人が居るって聞いたから。気持ちだけ伝えておきたいだけだから」

だから・・・、と言って吹雪くんは泣きそうな顔をした。吹雪くんは俺と同じように考えたんだ。同じような話を聞いて叶わない恋でも気持ちだけは伝えようって。本当、なにやってるんだろう俺は――――

「先、越されちゃった」
「え?え?」
「ごめんね、吹雪くん」

そう言って吹雪くんの頬にキスをした。

「コレが俺の気持ち。好きだよ、君のことが」

瞬間、吹雪くんの目から涙がポロポロとあふれでた。

「嘘・・・」
「嘘じゃないよ、今日だって吹雪くんに告白しようと思ってたんだ。先越されちゃったけど」
「ごめっ・・・」
「別にいいよ。ねぇ、吹雪くん・・・抱き締めてもいい?」

無言で頷いたから俺は吹雪くんを抱き締めた。吹雪くんの匂いがすごく心地よかった。
「吹雪くん、俺たち付き合おっか」
「いいの・・・?」
「もちろん、逆にお願いします」

吹雪くんは優しく微笑んだ。

「よろしくね、ヒロトくん」「こちらこそよろしくね」

互いに手を重ねた。俺より少しだけ小さい吹雪くんの手。今日、改めてしった。吹雪くんってこんなに小さかったんだ。まだまだ知らない君のことをこれから知っていくんだね。すごく楽しみだよ。

『今始まる君との恋』
(初めて叶った恋が君でよかった)




.


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ