稲妻

□だって、君が泣くから
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俺の家に遊びに来た神童は、急に俺の小さい頃の写真が見たいと言った。
俺はそれを快く承諾し、神童にアルバムを渡した。
アルバムを見ていた神童は、あるページの写真を見て首を傾げた。

「あれ?」
「ん?どうかしたのか?」
「この写真・・・」

そういって神童が指差した写真は俺が小学生になってすぐに髪を切ったときに撮った写真だった。

「この写真がどうかした?」
「霧野の髪が短いとこ見た覚えがないんだけど・・」
「でも、この写真小学生のときのやつだぞ?」

だから、お前も見てるはず。
そういったけど神童は本当に覚えがないらしく、首を傾げて唸った。

「俺の記憶に間違いがなかったら俺とお前は幼稚園のときから幼馴染みのはずだけど?」
「それは間違ってなんかないけど・・・」
「けど?」
「何で覚えてないんだ?幼稚園のときは今と同じ髪型だったよな・・・」
「あぁ、小学生になるからって切ったんだからな。そういえばこれが俺の中では唯一髪が短いときだなぁ」

俺が自分の髪に触れると神童も俺の髪に手を伸ばした。

「霧野は何で髪を短くしないんだ?俺は覚えがないけどこの写真みたいに」
「お前、本当に覚えてないんだな」
「??」

苦笑した俺の顔を見て神童は首を傾げた。
俺としては中々これも大切な思い出なので神童には早く思い出してもらいたい。

「お前が今の髪型がいいって言ったんだぞ?」
「え?本当か?」
「俺は嘘は言わない。お前が泣きながら蘭ちゃんは前のじゃなきゃヤダ・・って」
「・・・あ!!」
「何?思い出した?」
「思い出した!・・・何で忘れてたんだろう・・・」
「さぁ?」

神童は思い出せたことに一瞬笑みを浮かべたがすぐにまた首を傾げ始めた。そんな神童の姿に俺は少し笑った。

「なぁ、霧野」
「何だ?」
「もうこの髪型にしないのか?」
「多分な」
「何で?」
「秘密だよ」

俺が悪戯っぽく笑うと霧野の意地悪、と神童は頬を膨らました。神童のそんな表情を見ているとまた自然と笑みがこぼれた。
神童には言わないけど今の髪型を変えない理由なんてひとつしかないだろ。
お前が泣いて今の髪型が好きだって言ったからに決まってるじゃん。
それに約束したからな。


『だって、君が泣くから』
(らんちゃん・・・?かみ、きっちゃったの?)
(うん!しょうがくせいになるからな!)
(・・・ひっく・・)
(たくと・・・?ないてるの?どっかいたいのか!?)
(らんちゃんはまえのかみじゃないとやだー!)
(え、たくと!?)
(いまのやだー!!)
(わかった!わかったから!もうみじかくしないから!だからなきやんでよ!)
(・・ほんとう?もうみじかくしない?)
(うん!やくそく!)


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