稲妻

□初めての年越し参り
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「わあ・・・すっごい人だね・・・」
「後1時間で年も越すしな」
「俺、年越し参りって初めて」
「ん、俺も」

今年は風丸が年越し参りに行こうって言ったから寒い中、2人して厚着をして神社に来ていた。そこには、たくさんの家族やカップルが居てとてもにぎわっていた。
一応、自分たちも恋人を連れてきているのでそのなかの1人である。
俺はお日さま園育ちっていうのもあって年越し参りに来たのは初めてだった。それを風丸に言うと風丸も初めてで何だか少し嬉しくなった。

「緑川」
「何?」
「はぐれるなよ」

手元を見れば風丸が俺のほうに手を差し出してる。

「うん!」

その手をギュっと握り締めて俺たちは歩き出した。
神社の社に近づくにつれてどんどん人は増えていって、手を繋いでいても人ごみにもまれてつい手を離しそうになってしまう。
その度に、風丸は俺の手を強く握りなおしてくれた。
年越しまで後30分。
やっとの思いでついた社も人でごった返しで居た。

「ここも人多いねー」
「参るけどな」
「じゃないと来た意味ないもんね」
「ああ。ちゃんとお願いしろよ?」
「分かってるよ」

お願いごと。
何をお願いするか考えてなくて考え出すとお願いしたいことはやまほどあった。
そうやって1人で何をお願いするか考えて悶々としていると横で風丸がなんつー顔してんだよ、って笑った。どうやら、考えことをしているときの俺の顔は面白いみたい。
そうやって考えごとをしている間にあっという間に次は俺たちの番になっていた。

「さい銭いくら?」
「いくらでもいいぞ」
「ふーん・・・じゃあ、俺コレでいいや」
「結構出すんだな」

俺が出したのは500円。自分でもなかなか出したと思う。
俺が決めたお願いごとを少しでもかなえてもらうにはコレぐらい出さないとって思ったからの500円。

「だって、俺のお願いごとだとこれぐらい出さないと駄目なんだって」
「何だよ、それ。じゃぁ俺もそんだけ出す」
「風丸もすごいお願いごとするの?」
「んー、秘密」

そういって風丸は笑った。
2人で同時にさい銭を投げてお願い事をした。しっかり目を瞑ってお願い事をした。横をチラリと見ると風丸もしっかり目を瞑っていた。
お参りが終わるとまた風丸は手を繋ぎなおしてくれた。

「ねぇ、風丸はなんてお願いしたの?」
「言ったら駄目だろ」
「いいじゃんか、別に。あ、もしかしていえないお願い?世界征服とか?」
「お前は馬鹿か」

空いている手で軽く頭を叩かれた。

「いったー・・・」
「そういうお前こそ何てお願いしたんだよ」
「え、そこ聞いちゃうの?」
「お前が嫌なら別に答えなくてもいいけど」
「風丸と今年もずっと仲良く居れますようにってお願いした!」
「え?」

俺が悪戯をした子供のように笑うと風丸の頬が少し赤くなった気がした。少しだけ手を強く握られた気がして風丸を見た。

「風丸?」
「何だ・・・お前も俺と同じことお願いしてたんだな」
「え?本当!?」
「本当だって。嘘ついてどうするんだよ」

風丸が俺と一緒のお願いごとをしていた、それだけで凄く嬉しくて幸せな気持ちになった。
恥ずかしくて急に頬が熱くなった。

「お、もう少しで年が変わるぞ」

10、9、8、7・・・。
周りの参拝にきていた人たちがカウントダウンを始める。
2、1、0。
周りがちょっとした歓喜の声に包まれる。

「あけましておめでとう、風丸!!」
「おめでとう、今年もよろしくな」
「もちろん。今年もなんていわずこれからも、ね」

そういうと、周りにバレない程度に抱きしめあった。風丸は優しく微笑んでいた。

「年越し参りにくるとキスできないな」

風丸は少しだけ残念そうな顔をして言った。俺はそんな風丸を見て苦笑いをする。

「外だしね、ねぇ風丸」
「何だ?」
「帰りに絵馬書いてこうよ」

俺は繋いでいた手を引いて歩き出した。


『初めての年越し参り』
(初めての年越し参りで初めて絵馬を書いた)
(これからもずっと一緒に居れますよう
に。一郎太・リュウジ)




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