稲妻

□喧嘩するほど仲がいい
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「風丸、入るぞ?」
「円堂・・・」

円堂が部屋に入ると風丸はベッドに寝転がっていたが起き上がって座った。
円堂はベッドの横にある机の椅子に座ると風丸と話を始めた。

「なぁ、風丸」
「何だよ」
「風丸がそんなに怒ってるのさ、俺初めて見た」
「そうか?」
「あぁ。風丸はさみんなに注意とかはするけど本気で怒んないからな」
「・・・」
「だから、俺は今風丸にそうやって本当に怒ったりできる相手がいてすっげぇ嬉しいんだ!!」
「え・・・?」
「怒れるってことはそんだけ相手のこと考えてるってことだし何でも言い合えるぐらい信頼してるってことだしな!!」
「円堂・・・」
「ちょっと話したかっただけだし、俺もう行くな!」

円堂が部屋のドアに手をかけたところで風丸は「円堂!!」と呼び止めた。

「ん?」
「ありがとな」
「どういたしまして!!」

円堂はニカッと笑うと部屋を出ていってしまった。
風丸は少ししたあと、何かを決心したように部屋を出ていった。
――コンコン
緑川の部屋に来たヒロトはドアをノックしても返事がないため、ドアを開けた。

「緑川、いるの?入るよ」

そう声をかけてヒロトが部屋に入るとベッドの上で泣いている緑川がいた。

「いるじゃんか」
「ヒロト・・・」
「目、真っ赤にしちゃって酷い顔」

クスクスと笑いながらヒロトは緑川の涙を拭いて横に座った。

「ヒロト・・・」
「ん?」
「俺・・・どうしたらいい?風丸と・・・ケンカしちゃった」

緑川はヒロトにすがってまた泣き始めた。
そんな緑川を見て少し困った顔をした後、ヒロトは緑川の頭を撫でながら話始めた。

「ねえ、緑川はどうしたい?」
「どうしたいって・・・」
「風丸くんと仲直りしたい?」
「そんなの!!・・・仲直りしたいよ、でも・・・」
「でも?」
「絶対に許してくれないよ。あんなに怒った風丸見たことないもん、それに俺たくさん酷いこといっちゃった」

緑川は複雑な気持ちが入り交じっていていつもの笑顔の欠片も見られない。
そんな緑川に対してヒロトは優しく話す。

「風丸くんがさ、あんなに怒ってる姿、円堂くんでも見るの初めてなんだって」
「そう・・・なの?」
「うん。風丸くんは優しいからね、緑川に対してもでしょ?」
「誰よりも俺のこと考えてくれてる・・・」
「考えてくれるのは緑川が好きだから、だからケンカの内容は知らないけど風丸くんは緑川に怒ったんじゃないの?」
「そうなのかな・・・」
「信じなよ。好きなんだろ?」
「うん、好きだよ。誰よりも大好き・・・」
「その気持ちがあれば大丈夫!!仲直りできるよ」

そう言ってベッドから立ち上がったヒロトは何も言わず出ていった。
ドアを開けたときドアの前に居た風丸に小さく声をかける。

「聞こえてたでしょ?後、よろしくね」
「悪いな、ヒロト」
「どういたしまして」

ヒロトが廊下の角を曲がったのを確認してからドアをノックした。

「入るぞ、緑川」
「風丸・・・」

風丸は部屋に入り、泣いた痕のある緑川の顔を見てすこし顔をしかめた。

「泣いたのか?」
「ちがっ!!泣くわけなんか・・・」

緑川の強がった声はどんどん小さくなっていき、あげくの果てに泣き出した。

「・・・ひっく・・・風丸、ごめんなさい」
「何で緑川が謝るんだよ」
「だって、悪いのは俺だから・・・」
「違うだろ、悪いのはお互い様だ。たまたま、意見が食い違っておきたケンカだ。俺のほうこそごめん」
「かぜ・・・まるぅ」
「はいはい」

また、泣き出した緑川を風丸は抱き締めた。

「俺、風丸が大好きだよ」
「俺もだよ」

二人は仲直りの証と言わんばかりにキスをした。
―翌日―

「風丸ー、これ嫌い」
「嫌いでも食べろ」
「食べさせてくれたら食べるよ」
「まったく・・・ほら、あーん」
「あーん」
『・・・』

朝から食堂にはピンク色の空気が流れていた。
今まではコレが普通だったのだが昨日の今日では皆が変な気持ちを抱えてしまっている。

「あの二人のケンカってある意味怖いねー」
「ある意味ね」
「まぁ、仲直りするならいいんじゃねえの?」
「だな!!」


『喧嘩するほど仲がいい』
(風丸、大好きだからね!)
(俺もだよ)



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