稲妻

□思い出の歌
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「〜♪・・・」
「ねぇ、吹雪くん。その鼻歌は何の曲?」

俺がうとうととしている中、横で携帯を弄りながら鼻歌を歌っていた吹雪くん。急に話しかけるとふえ?、と何とも情けない返事が返ってきた。

「僕、鼻歌歌ってた?」
「うん・・・もしかして無意識だったの」
「かもね」

吹雪くんは苦笑をした。

「あのさ、どんな歌だったか分かる・・・?」
「えーっと・・・こんな感じだったかな」

そういって俺が歌うと吹雪くんは驚いた顔をした。だけど、急に寂しそうな嬉しそうな何ともいえない表情をした。

「吹雪くん?」
「・・・母さんの歌だ」
「お母さんの?」
「母さんがよく僕とアツヤを寝かすときに歌っていた歌なんだ」

まだ、口ずさむほど覚えていたんだ。そういって微笑した。母さんを思い出す寂しさ、覚えている嬉しさが吹雪くんにこんな表情をさせるんだろうな、って考える。

「ヒロトくん、ごめんね」
「え?」
「ヒロトくん眠そうにしてたのにうるさかったでしょ?」
「そんなことないよ」

吹雪くんの頭を軽く撫でた。

「吹雪くんが歌っているのを聞くの好きなんだ」
「そうなの?」
「うん」

俺が笑うと吹雪くんは少しだけ頬を赤く染めた。

「ねぇ、もう少しお母さんの歌聞かせて?」
「え・・・」
「駄目?」
「・・・いいよ」

吹雪くんが笑ったのを見てありがとう、って頬にキスをする。

「寝るんだったら膝貸そうか?」
「うん、お願い」

俺が寝転がると吹雪くんは俺の頭を撫でながら今度は鼻歌じゃなく口ずさんだ。
その歌が凄く心地よくて俺はあっという間に微睡みに落ちた。


『思い出の歌』
(今度は俺の思い出の歌を歌ってあげるね)



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