稲妻

□バレンタイン
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「あのさ霧野・・・」
「ん、何?」

神童は頬を少し染めながら後ろ手に持っていた箱を俺に渡した。

「これ、チョコなんだけど」
「いつもありがとうな!!もちろん、本命だろ?」
「っ!・・・当たり前だろ」

俺が意地悪そうな笑みを浮かべて聞くと神童はさらに顔を赤くした。こうして答えてくれるようになったあたり、付き合い始めよりは成長した気がする。

「今年のチョコもいつものやつ?それとも・・・神童の手作り?」
「・・・手作り」

神童は小さな声で言ったけど、俺はそれを聞き逃さなかった。

「本当に!?」
「あぁ。全部、自分でやった」

いつも市販のものだから今年もそうだと思っていたから神童には驚かされた。
俺は自分の手元にある箱を見る。今すぐ開けて、中を見たいという衝動に駆られた。

「中、見てもいいか?」
「あぁ・・・下手でも笑うなよ?」
「大丈夫。笑わないよ」

少し不安そうな顔をする神童の頭を撫でて、俺は箱をあけた。あけると少しチョコの香りがした。

「おー・・・」

箱の中にはお世辞にも見た目は綺麗とは言いがたいが美味しそうなブラウニーとクッキーが入っていた。

「ごめん、形が上手く出来なくて・・・」
「いいんだよ。お前らしさが出てる」
「ありがとう、霧野」

今、考えたら神童が手作りのものをくれたのは初めてかもしれない。それに手料理自体、神童は初めてしたはずだ。そう思うと形とかはどうでもいいと思った。

「なぁ、食べてもいい?」
「え・・・うん」

神童は驚いた表情をしたがすぐ頷いてくれた。俺は1切れブラウニーをとると口に入れた。甘い味が口いっぱいに広がる。俺が食べている間、神童は俺をじっと見ていた。

「ど・・・どうかな??」
「んー・・・」

神童が不安そうな顔をして聞いてくるので俺は率直に言ってやった。

「普通に美味い」
「本当か!?」
「あぁ、今まで食べてきたなかで一番うまかった」
「それは大げさだろ」
「いや、形が綺麗じゃなくても味が普通でもお前が俺のために作ったってだけで一番に思えるんだよ」

俺がそう言うと神童は嬉しそうに笑った。

「ありがとう、神童。今までで最高のバレンタインだ」
「どういたしまして。じゃあ、俺も最高のホワイトデーにしてもらわないとな」
「さりげなくハードル上げるなよな...」
「大丈夫だって。お前なら簡単だよ」

俺に抱きついてきた神童を俺は抱き締め返した。
いつもと違う、甘い甘いバレンタイン。






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