稲妻
□君が嫌いな自分も僕は好き
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「ヒロトくんはさ、身長高くていいよね」
練習の休憩中、吹雪くんはタオルで汗を拭きながら苦笑ぎみに言った。
「俺はそんなに高くないよ?」
「それだけあれば充分だよ。僕なんか、ほら」
吹雪くんは俺の後ろに立つと背中を合わせた。そして、吹雪くんは自分と俺の身長を比べているのか頭に手が当たる。比べ終えたのか吹雪くんは俺の前に立ち直すと親指と人差し指で間を作って俺に見せた。
「こんなにも身長差あるんだよ?」
吹雪くんは怒ったように頬を膨らませて俺を見た。俺はそんな姿に苦笑する。
「僕ももうちょっとでいいから身長高くなりたいな」
「でも、俺は吹雪くんの今の身長好きだけどな」
「嘘でしょ?」
吹雪くんから向けられる疑いの瞳ににっこりと笑い返す。
「本当だよ」
「じゃあ、何で好きなのさ」
「そうだな…その身長だとね、頭撫でやすいんだよ」
「それだけ?」
「後はね、意外にキスとかしやすいだよ?」
そう言って俺が頬に周りにはバレないぐらいに軽くキスをすると吹雪くんは顔を赤くして俺から反らした。
「ヒロトくん、意味分かんないよ…」
「そうだろうね。でも本当に好きな理由は何よりも一番吹雪くんを抱きしめやすいってところなんだけど」
今度は吹雪くんを思い切り抱きしめた。吹雪くんは抵抗するわけでもなく俺の背中に手を回す。
「俺が吹雪くんの身長が好きな理由分かってもらえたかな?」
俺が聞くと吹雪くんは顔を横に振った。
「そんなの分かんないよ。でもね…」
「?」
「この身長でも悪くないかなーって思った…」
顔を赤らめた吹雪くんに胸がときめく。キスをしようとして風丸くんに止められて、グラウンドに居ることに気づくのはまた別の話。
『君が嫌いな自分も僕は好き』
(背伸びなんかしなくても)
(今の君が僕は好きだよ)