稲妻

□早く治るかな?
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「今から1週間ぶんの日程が書かれたプリント配りますねー」

そう言った音無さんは木野さんたちとプリントを配り始める。俺が回ってきたプリントに目を通していると後ろから「いたっ」と声が聞こえた。振り向くと吹雪くんが眉をしかめて自分の指を見ていた。

「どうしたの?」
「あはは…、指切っちゃった」

吹雪くんは苦笑しながら俺に向かって指を見せた。その指の先には筋が入っており赤い血が滲みでてきている。吹雪くんの肌は白いため赤がよく映えて目に痛い。

「吹雪くん、大丈夫?今絆創膏持ってくるからね」

そう言って木野さんは部屋を出ていった。

「木野さんに悪いことしちゃったなぁ…」
「本当だよー、吹雪のドジー」
「ドジとかじゃないからね。不慮の事故だよ」

吹雪くんはと言うと俺の横に座っている緑川と談笑していた。俺はそんな吹雪くんの顔と血が滲み出る指を交互に見る。

「吹雪くん、指痛い?」
「え?そんなに痛くないよ。大丈夫」

ただ、血だけはね…、と言って吹雪くんはまた苦笑した。俺は吹雪くんの指を取るとその指の先を口に含む。吹雪くんの目は驚きの色に変わった。

「ちょっと、ヒロトくん!?」

俺はすぐに指を抜く。

「何?」
「何じゃなくて何してるの!?」
「うーんと…止血?」
「バカ!!」

吹雪くんの顔は真っ赤になっていて恥ずかしかったのかすぐ机に顔を伏せてしまった。

「吹雪くん?」
「ヒロトくん、うるさい」
「え…緑川、俺やりすぎ?」
「うん、やりすぎ」


『早く治るかな?』
(吹雪くん、持ってきたよ)
(ありがとう)
(顔真っ赤だよ?大丈夫?)
(っ!!大丈夫だから!)





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