稲妻
□雨も悪くない
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「雨、止みそうにないね」
窓から外を見ていた吹雪くんは呟いた。ベッドに座っていた俺は窓のほうに目をやってそれに対し、そうだねと一言返す。
「ヒロトくんは雨嫌い?」
俺のほうに振り向いた吹雪くんは少し首を傾げた。
「そうだな…どちらかと言うと嫌いかもね」
「そっか」
吹雪くんは俺の答えを聞くと俺の前まで来て立った。
「吹雪くん?」
吹雪くんはにっこり笑うと俺に思い切り抱きついた。俺は急に来た衝撃に耐えられず吹雪くんと共に倒れこんだ。
「ちょっと、吹雪く」
俺の声は吹雪くんに口付けられることで最後まで発せられることはなかった。唇を離した吹雪くんは頬を赤らめて俺にぎゅうっと抱きついた。
「僕は好きだよ、雨」
「そうなの?」
「うん」
俺は少し恐る恐る吹雪くんの背中に手を回した。
「…理由は聞かないの?」
「聞いたほうがいい?」
吹雪くんは無言でぎゅうっと少しだけ手に力を込めた。これは肯定の合図。
「じゃあ…何で吹雪くんは雨が好きなの?」
「…一日中ヒロトくんと居れるもん。ゆっくり二人だけで居ることが出来る」
吹雪くんは俺の顔をじっと見た。俺はその頬に手を添えると吹雪くんの唇に自分のそれを重ねた。
「ん…ヒロトくん」
「好きだよ、吹雪くん」
吹雪くんはまた少し顔を赤くした。けれどふわりと愛らしく笑うと僕もだよってリップ音をたてて軽く口づけた。
『雨も悪くない』
(嫌いなものが君を通して好きになる瞬間)
(あぁ、何て幸せだ)