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□名前
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「小野寺」

自分より低く落ち着いた声が耳に入ると自然と眉間に皺が寄ってしまう。

「小野寺」

自分を呼ぶ声の主の姿を視界にいれたくないから自然と身体が固まってしまう。

「・・・・・・・」

しばしの沈黙。自分でもおきれるほど頑なな態度に諦めたのだろうか?

「・・・・・律」

心臓がドクンと跳ね上がると同時に背中から優しい温もりが覆いかぶさってきた。

わかってはいたけど結局負けるのは自分。

「・・・・・何ですか。」

重なる体温に溶かされるようにそれまで強張っていた身体がどんどん解されていく。

「何、名前で呼ばれる方がうれしいのか?」

耳元でクスリと笑う声が聞こえてきた。背中越しのため真っ赤になっている顔を見られないのは幸いかもしれない。

−この人はいつだってこう・・・

内心諦めた律は、高野にも聞こえるようにわざと長い溜息をつき、巻きつく腕にそっと自らの手を添えた。

−Yes、なんて言ってやるもんか
 

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