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□いつか絶対
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「よしできた!!」

就職し、一人暮らしを始めてからというもの、律はまともの炊事をしたことのない。
出版社の編集職という不規則な仕事に就いているからというのもあるが、ずっと親元で暮らしていたためあまり台所にも立ったことはない。
だから食事はコンビニか栄養補助食というのが律の生活の中では常であった。
そんなことではいけないと【漫画編集の仕事も完璧に、さらに私生活も充実!】という目標を掲げた律は、今日ひさしぶりに夕食を作ることにした。
炊事が得意だという羽鳥からいくつかレシピをもらった中では、カレーが今の律には一番作れそうだった。
帰りにスーパーで材料を買い込み、野菜の皮むきも四苦八苦しながらようやくカレーが完成したときには時計の針は既に22時を過ぎていた。

「はぁ〜やっぱ慣れない作業は疲れる・・・で、でもこれはちょっと少し分量間違えたかも・・・」

見ると鍋いっぱいに入ったカレー。一人暮らしの律が食べきるには何日もかかってしまう量だった。
なんせ包丁でさえまともに持ったことのない律が一人分の分量を量れるはずもなかったのだ。

「これじゃ、ここしばらく朝も晩もカレーになっちゃうな・・・捨てるのももったいないし・・・」

頭に浮かんだのはなぜか隣人であり上司の顔。
高野は今日作家との打ち合わせで一日中出かけていて顔を見ていない。律が会社を出るときにもまだ帰ってはこなかった。

「・・・べ、べつに高野さんが夕食どうするかなんて気にすることないだろ!」

ついこの間、傘がなかった律を高野は自宅に招き風呂やにいれてくれた上に食事まで作ってくれた。
高野の部屋には仕事のことか、(強引に?)抱かれるときくらいしか入ったことないのに。
高野が作ってくれた食事は冷えた律の身体には温かくてとても美味しかった。
結局その後、律は高野から逃げることもできず一晩一緒に過ごしたわけだが・・・

「よ、よし!これはこの前の御礼なだけ!あの人にあまり貸しは作りたくないからな。」

そう自らに何度も言い聞かすようにカレーを小さなタッパーに移し変え、高野の部屋に向かう。
ピンポーンとインターホンを押してみたが、中から人が出てくる気配はなかった。

−まだ帰ってないのか・・・
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