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□ヤキモチ?
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完徹3日目−

通勤ラッシュで足早く人々が駆けていく中、印刷所にデッド入稿をすませた律がおぼつかない足取りで会社へと向かっていた。

「うぅ・・・毎月毎月こんなんじゃいつか身体壊す・・・」

文芸の編集のときにはありえない進行。今回も律の担当はビリではなかったものの、相当ヤバかった。
でも文芸のときにはなかったやりがいのようなものを律はこの漫画編集に感じていた。
ふらふらとする身体にムチ打ってようやく会社に到着。

「高野さん、無事印刷所に入稿終わりました。」
「・・・・・・お疲れ。」

眼鏡越しに薄く目を開け、高野は短く律に声をかけた。
エメ編のフロアにいたのは高野だけで、他の3人はどうやら帰ったようだった。
律もこのまま帰りたいところだが、作りかけだった新刊の企画書を今日中に完成させなければならない。
とりあえず眠気をさまそうと、自販機に缶コーヒーでも買いに行くことにした。

−もはや瞼を開けていることでさえツラすぎる・・・

休憩スペースに行くと、そこには女子社員数名がソファに座っておしゃべりに花を咲かせていた。
女子社員たちの甲高い声はいまの律にとっては耳障りのほかならない。
早くここから離れようと、財布から小銭を探していた律の耳に入ってきたのは−

「でもやっぱりこの会社の中では高野さんがダントツでかっこいいよね〜。」
「う〜ん。そうなんだけどやっぱり高野さんってすごく遊んでそう。」
「そういえば私の友達で高野さんと同じ大学で後輩だった子がいるんだけど、高野さんってとっかえひっかえ女性と付き合っていたらしいよ、」

律の心臓がドキリと跳ね上がる。
以前、横澤から聞いた話を思い出した。大学生の頃、荒れてた高野がとっかえひっかえ女性と付き合っていたことを・・・
中学高校と律が6年間見てきた高野は、いつも一人図書館で本を読んでいて友達といるところなど見たことはなかった。

−やっぱり俺が原因なのだろうか・・・

あの頃、律だって高野に裏切られた思いでいっぱいだった。留学してからもなかなか立ち直れず、言い寄ってきた女の子と付き合ったこともある。

「え〜やっぱりぃ〜?でも遊びでもいいから高野さんと付き合ってみたーい!」

女子社員の言葉にイラっとした。そりゃ男から見てもカッコいいと思うんだから、高野は女子社員たちの憧れの的だろう。
彼女たちは高野の何を知っている?どこが好きなんだ?

−遊びでもいいなんて、そんないい加減な・・・!
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