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□熱い夏
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「はぁぁ〜暑い〜〜」
「木佐、大声で暑い暑い言うな。余計に暑くなるだろうが。」

隣の席でけだるそうにうちわをあおぐ木佐さんに、羽鳥さんが釘を差した。
そういえば朝のテレビで今日も猛暑になるって言ってたっけ?
いまはまだネームチェックの段階。割と余裕がある方だ。だから気が抜けてしまうのもわかる。

「あ、俺これから書類の受け取りに出ますんで、帰りにアイスでも買ってきましょうか?」
「律ちゃん、ナイス〜!俺、バリバリ君ソーダ味!!」
「はいはい。他の方はどうですか?」
「小野寺君にまかせるよ。」
「わかりました。」

外に出ると容赦なく強い日差しが照りつける。近くのコンビニまでの足取りを重く感じながら律はアイスを買い込みそのまま
会社までトンボ帰りをした。乗り込んだエレベーターが途中の階で止まる。
扉が開くと見慣れた顔が律の視界に入ってきた。

「あ・・・高野さん。」
「なんだお前?どこに行ってたんだ」
「アイスを買いにコンビニまで・・・」
「俺の分買ってきたか?」
「そう言うと思ったので買ってきましたよ。」

買ってこないことがバレたら後で何されるかわからない・・・そう思った律は高野の分もちゃんと買っておいたのだ。
律の回答に満足したのか、高野は口の端をニヤリと上げた。

「やっぱり俺、愛されてるな・・・」
「はぁ?何ですかそれ??」
「俺がいないときもお前はちゃんと俺のこと考えてくれてるんだな〜と思っただけだよ。」
「だからそれは違いますって・・・んっ・・」

誤解を解こうと必死になる律の口を高野の唇が塞ぐ。抵抗したいのに高野が与えてくれるキスの甘さに律の思考がぼやけてくる。

−馬鹿!ここ会社のエレベーターだろ!

律がなんとか理性を取り戻したと同時に高野の唇が離れ、そしてエレベーターのドアが開く。

「お前が口でなんと言おうが、少なくともお前の身体の方は素直だぞ?」

そう言って高野はさっさとエレベーターを降りていった。
名残惜しい唇の感触と内から熱くなる身体、鼓動が早くなる心臓・・・

−・・・本当に、今日も暑い・・・

早くアイスを食べて身体の火照りを抑えなければ・・・律の熱い夏はまだまだ続く

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