突然の夕立。
梅雨の時分、傘も持たずに家を出た自分の行動を私はコンビニの前で猛烈に悔やんでいた。
軒先からしたたる雨だれを疎ましげに見詰めていると、遠くから聞き覚えのあるエンジン音。
爆音を轟かせた直管仕様の赤いバイクが私の前で止まった。
シールドから見える目付きはお世辞でもいいとは難い。
幼馴染の以蔵だった。
「こんなところで何やってんだ。」
「傘もってなくてさ。以蔵こそ雨なのにバイクなんかでどこ行くの?」
小さくため息を吐いた以蔵は私の質問には答えずに、被っていたヘルメットをこちらに投げてよこした。
「お前んち」
「えっ?」
「送ってやるって言ってんだ。早くメット被れ。」
「でも以蔵、雨降ってるし、女はタンデムに乗せないって・・・」
「小雨になったから心配すんな。梅雨だからか明日まで降り続くらしいぞ。それとも一晩中そこでつっ立ってる気か?」
「それはいやっ!」
私は小走りで以蔵のバイクに駆け寄った。
乗ったと同時にバイクが急発進したため、思わずぎゅうっと以蔵の背中にしがみついてしまった。
大きな背中。
ねえ、この場所に座った女の子って、私だけなのかなぁ。
もしもそうなら
ほんの少しだけ、梅雨に感謝しようかな――。