樹ぎつね
□出会い
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「暑い〜。もう本当に信じらんない!!」
隣で麻衣が盛大にぐちをこぼした。
額にうっすらとにじんだ汗を首に掛けたタオルでぬぐう。
「仕方ないよ。夏の登校日なんて毎年あるし。小学校の時なんて草刈りだったじゃん?」
「友香、あんた一体いつの話してんのさ。私達花の高校生よ!なんでこの夏休みど真ん中に学校じゃない所で補習があんのかって話なの。」
あ〜、あり得ない。とガックリ肩を落とす。
「台風今年多かったから。」
一言で返すと、こちらを一目見てため息をついた。
「ほんとに友香はなんというか、飲み込みがいいというか。」
「仕方ないことは仕方ないって私は割り切れるの。」
麻衣みたいにグチグチ言わない主義。と付け加えると、なにをーと追いかけてくる。
適当に逃げてあしらうと、あっ!っと麻衣は立ち止まった。
「どうした?」
「忘れてた。おばちゃん家寄らないといけないんだった。最悪〜、戻らなきゃいけないじゃん。」
振り返って肩を落とす。
同じように振り返ると、遠く先には蜃気楼がゆらゆらとゆれていた。
「が、がんばって!!」
麻衣はもう一度ため息をつくと、じゃね。と軽く片手をあげて戻り始めた。
「また連絡してね。」
後ろ姿に声をかけると、片手をあげて横に2度振る。
その姿に少し笑みを浮かべると、私は逆の方向に歩き始めた。