樹ぎつね
□夕立が運ぶもの
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「おはよう。」
食卓には、すでに身支度を整えた母がいた。
おはよう。と返すと、友香は食パンをトーストに入れる。
コーヒーは机にすでに準備されていた。
「今日は?」
何を聞かれてるのかも一見わからない質問だが、母と私だとそれも通じてしまう。
「麻衣は田舎だって。宿題でもするつもり。」
「そっか。今日は遅くなるから、適当に冷蔵庫のもの食べといて。」
そう言い残すと、母は二階の自室へと戻っていった。
朝食を終えても、時計はまだ6時半を指していた。
ふと昨日のことを思い出す。
…あの狐どうしてるかな。
昨日は対峙していたから、たいして深く考えなかったが、喋る動物なんてあり得ない。
でも夢というには記憶がはっきりしすぎている。
…行ってみようか。
一度そう思うと、その考えから離れられなくなった。
暑くならないうちに。と友香は手早く準備をすると、家を出た。