Howl's moving castel
□君を想う
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過ぎた日々を想う
「ハウルさん。ソフィーさんがおばあさんじゃないと、いつ気がついていたんですか?」
マイケルが、今思い出したかのようにハウルに尋ねた。
きっとタイミングを見計らっていたんだろう。
マイケルの瞳がちらりとソフィーをとらえ、今度は天井へと向かう。
その先には何も見るものがないというのに。
可哀想な僕の蜘蛛達。
ソフィーに追いやられてすっかり宿替えをしたらしい。
「僕の愛しいソフィーはそんなこと気にしてるのかい?」
縫い物に精を出している振りをしているけど、耳はしっかりこっちを向いている。
ほんとにソフィーったら、どうしてこうも可愛いんだろう。
こんな根回しなんてして。自分で聞けば良いのに。
ソフィーの後ろから抱きついて見る。
「ちょっとハウル!?危ないでしょう?」
「ねぇ、ソフィー。どうしてそんな事知りたいの?それは僕とのことだから?それともソフィーったらほんとに世界中の事全部知らないと気が済まないの?」
腕の中にいるソフィーったら顔が真っ赤。
「私が聞いてないじゃない。」
ぽつりとこぼした言葉は、さっきの会話を聞いてる証拠。
ほらね、しっかり聞いてる。
でも、いつだったかな。
よく覚えてないけど、そうかなと思う場面はたくさんあった。
ソフィーは演じ切っていたけど、やっぱり若さが所々に滲んでた。
今思うと、ソフィーったら。
昔のソフィーが脳裏に浮かび、思わず笑ってしまう。
それに気を悪くしたのか、ソフィーはまた針を持ち直すと、飛ぶように縫い上げてゆく。
まだうっすらと赤い頬を見て、ハウルの心臓に温かさが広がった。