「ちょー、消しゴム貸して。」
了承もしてないのに、机から消しゴムが消える。
「ちょっと、私が今使おうとしてたのに!」
ばっちり目があってしまった。
さっきまでの威勢はどこえやら。
思わず目を伏せてしまう。
それを見て、何を勘違いしたのか、あいつは慌てているようだ。
「ごめんって。そんな怒ることないやん。ほれ。」
消しゴムがコロンと机に戻る。
「さきに使ってええで。」
見てはいないが、満面の笑みを私に向けているんだろう。
−これ、私のなんだから。
真っ赤に染まった顔を隠すように、消しゴムは小さくなってゆく。